ユーリ・ルシコフ

ユーリ・ミハイロヴィチ・ルシコフ：激動の時代を駆け抜けたモスクワ市長

ユーリ・ミハイロヴィチ・ルシコフ（1936年9月21日 - 2019年12月10日）は、ソビエト連邦末期からロシア連邦初期にかけて活躍した政治家です。18年間にわたりモスクワ市長を務め、その手腕でモスクワを大きく変貌させました。

生い立ちと初期のキャリア

ルシコフは、1936年にモスクワで、大工の家庭に生まれました。モスクワ石油ガス化学工業大学を卒業後、プラスチック研究所に勤務。その有能さを認められ、化学工業省の部長に抜擢されるなど、早くから頭角を現しました。1968年にはソ連共産党に入党し、政治家としての道を歩み始めます。

1980年には生産合同「ネフチヒムアヴトマーチカ」の総支配人に就任。1977年からはモスクワ市ソビエト（市議会）代議員を務め、その後もモスクワ市人民委員会執行委員会第一副議長、モスクワ市共産党第一書記、ロシア共和国最高会議代議員といった要職を歴任しました。1990年には、モスクワ市長ガブリール・ポポフによってモスクワ市人民委員会執行委員会議長に任命されています。

モスクワ市長として

1991年のソ連8月クーデター後、ルシコフはソ連国民経済管理委員会（暫定政府）の副議長（副首相）に就任。国内商業、対外経済関係、社会政策、農工コンプレックスなどを担当しました。同年6月には、ポポフ市長によりモスクワ市政府首相に指名されています。

ポポフの辞任後、1992年6月にはエリツィン大統領によってモスクワ市長に任命されました。1996年の市長選挙では90％を超える圧倒的な得票率で当選を果たし、その人気と実力を示しました。

ルシコフは、モスクワ市長として、積極的に外国からの投資を呼び込みました。その額はロシア全体の5割に相当すると言われ、モスクワを社会主義国家の首都から、資本主義経済下の大都市へと変貌させる原動力となりました。一方で、秘密警察チェーカーの創設者ジェルジンスキー像の再建や、スターリンのポスターを陳列する計画など、物議を醸す主張も行いました。

クレムリンとの対立と失脚

長期政権となるにつれて、ルシコフはクレムリンとの対立を深めていきました。そして2010年9月28日、メドヴェージェフ大統領によって解任されることとなりました。

晩年

晩年は、家族とともに主にイギリスのロンドンに滞在し、クレムリンとの距離を置きました。2011年には、ロシアの野党活動家アレクセイ・ナワリヌイに同情的な発言をしています。2016年ロシア下院選挙ではロシア連邦共産党の候補を支持していました。

2019年12月10日、手術を受けていたドイツのミュンヘンで83歳で死去。激動の時代を駆け抜けた政治家の生涯に幕を閉じました。

ユーリ・ミハイロヴィチ・ルシコフは、その功績と Controversies 含めて、ロシア現代史における重要な人物の一人として記憶されるでしょう。

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