ユーロダンス

ユーロダンスとは

ユーロダンスは、1990年代初頭にヨーロッパで誕生した電子音楽のジャンルです。ドイツ、イタリア、フランス、ベルギー、スウェーデンなどの国々で生まれ、ハウス、Hi-NRG、イタロディスコといった様々な音楽ジャンルの影響を受けています。

ユーロダンスの定義

ユーロダンスは、時代と共に定義が変化してきました。1990年代後半には「ユーロ・ハウス」や「ユーロ・エナジー」とも呼ばれましたが、ヨーロッパでは単に「ダンス」と呼ばれることもありました。

広い意味では、ヨーロッパのダンスミュージック全般を指すこともありますが、狭義には1990年代に流行したNRGベースの音楽を指します。これらの音楽には、ボーカルのソロやボーカルとラップのデュエットが用いられ、カスケーダのような後期のヨーロッパのダンスミュージックも含まれます。

ユーロダンスは、ヨーロッパのナイトクラブ向けのエレクトロ音楽として定義されますが、一般大衆にも受け入れられるポピュラーなサウンドも持っています。

ユーロダンスの特徴

ユーロダンスの楽曲は、一般的に以下の特徴を持っています。

シンセサイザーのリフ
サンプリングされたコーラス付きの女性ボーカル
男性によるラップ
強いビート
明るくテンポが速い曲調
愛、平和、ディスコ、クラブ、ダンス、パーティー、日常生活のストレスからの解放などをテーマにした歌詞

1990年代のユーロダンスは、ソロボーカルやラップとボーカルの掛け合いが主流でした。

ユーロダンスの歴史

ユーロダンスは、初期のテクノ、ハウス、ヒップホップ、NRGなど、様々な電子ダンスミュージックが混ざり合って誕生しました。Hi-NRGやユーロビートの華やかさと、テクノやヒップホップの暗さ、裏拍を活かした複雑なリズム感が融合しています。

1988年のマーズによる「パンプ・アップ・ザ・ボリューム」は、ユーロダンスの先駆けとなるヒット曲です。さらに、1990年にはブラック・ボックスの「エブリバディ・エブリバディ」が全米ポップチャートでヒットしました。

各国のユーロダンスシーン

ドイツ: カルチャー・ビート、キャプテン・ハリウッド・プロジェクト、スナップなど、多くのユーロダンスミュージシャンが活躍しました。
フランス: ホット・ブラッドやバンザイがルーツですが、1980年代から90年代にかけて、洗練されたユーロダンスグループが登場しました。
イタリア: ブラック・ボックスなどが代表的です。イタロディスコはユーロダンスのサブジャンルとみなされることもありますが、ユーロダンスよりもHi-NRGの欧州版である『スペース・ディスコ』の影響を受けています。イタリアのユーロダンスアーティストは、オペラのような女性ボーカルを用いる傾向があります。また、エッフェル65のような後期ユーロダンスアーティストは、行進曲のようなリズムを取り入れました。

Hi-NRGとの関係

Hi-NRGは、ディスコブームが去った後、アメリカのアンダーグラウンドシーンで生まれました。ユーロダンスは、BPMの速さや女性ボーカルの多用など、Hi-NRGから強い影響を受けています。Hi-NRGはディスコの技術的な進化、ユーロダンスはユーロディスコのテクノ的な進化と解釈することもできます。

ハウスとの関係

ハウスも、アメリカのアンダーグラウンドシーンで生まれ、1980年代に欧州に伝わりました。初期のハウスには、ユーロダンスの要素を持つ曲も存在しました。しかし、ヨーロッパのハウスミュージック全てがユーロダンスに吸収されたわけではありません。2000年代には、ハードなシンセサウンドをゆっくりとしたテンポに乗せるハウスも登場しました。

ラップ・ヒップホップとの関係

1980年代にはラップの要素が見られる曲が登場し、90年代にはスナップ!やテクノトロニックといったアーティストがヒットを飛ばしました。ハウスミュージックとラップの組み合わせは、ヒップハウスとも呼ばれ、1980年代末から1990年代初頭にかけてクラブで流行しました。

ユーロダンスでは、女性コーラスと男性ラップの組み合わせが多く見られ、リアル・マッコイ、アルカザール、カペラ、アレクシア、2 アンリミテッドなどが代表的です。

アメリカでの展開

1993年から1998年の間、アメリカのチャートにユーロダンスの楽曲がランクインすることもありましたが、それらの楽曲はラップやハウスの要素が強く、ヒップハウスプロジェクトの「スナップ!」が特にヒットしました。

1990年代後半には、エッフェル65の『ブルー（ダ・バ・ビー）』やアクアの『バービー・ガール』といった曲が大ヒットしました。コンピレーションアルバムや雑誌も、アメリカやカナダにおけるユーロダンスの人気を高めました。

2000年代以降

ユーロダンスはテクノの影響を受けていたため、サウンド面でテクノと似たところがあります。2000年ごろから、ユーロダンスの影響を受けたトランスが流行し始めました。

ファイル共有サイトやオンラインネットワークサイトの普及により、ユーロダンスの再評価が進みました。ミルクInc.、スペシャルD、カスケーダなどのアーティストが活躍しました。

主なアーティスト

リアル・マッコイ
トゥウェンティ・フォー・セブン
ブラック・ボックス
2 アンリミテッド
スクーター
アクア
ベンガボーイズ
Smile.dk
カートゥーンズ
エッフェル65
トーイ・ボックス
カスケーダ
イタロブラザーズ

ボーカリスト

イー・タイプ
ダブル・ユー
ハダウェイ
ジェシカ・ジェイ
アレクシア
テス
Whigfield

ラップ＋ユーロダンス

テクノトロニック
アイスMC
DJ BOBO

関連ジャンル

バブルガムダンス: バブルガムポップをユーロダンス風にアレンジしたものです。
ユーロトランス: テクノサウンドをベースに、ヴォーカルにエコーをかけたり、シンセサイザーが響きのあるコード進行でメロディーラインを奏でたりするジャンルです。
ユーロビート: 日本でよく使われる言葉で、音楽ゲームにも採用されています。
トランス (音楽)
シンセポップ: 1980年代に登場した、シンセの音色がロックサウンドに乗った音楽です。
ユーロポップ: アバのディスコサウンドをルーツに、キャッチーなメロディとシンセベースが特徴です。

まとめ

ユーロダンスは、1990年代のヨーロッパを席巻した電子音楽のジャンルであり、その影響は現代のダンスミュージックにも受け継がれています。本稿では、ユーロダンスの歴史、特徴、代表的なアーティストについて解説しました。ユーロダンスの世界をより深く知る上で、本稿が役立つことを願っています。

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