ユーロビジョン・ソング・コンテスト1974

1974年4月6日、イギリス・ブライトンのブライトン・ドームで、第19回ユーロビジョン・ソング・コンテストが開催されました。前年の優勝国ルクセンブルクは、2年連続開催の資金調達困難を理由に開催権を辞退したため、イギリスが代理開催国となりました。これはイギリスにとって5回目の開催でした。

司会を務めたのは、4度目の登板となるケイティ・ボイルでした。放送時間は1時間50分に及びました。参加国は前年より1ヶ国増え、17ヶ国となりました。オーストリア、デンマーク、マルタ、アイスランド、トルコは、大会を中継放送しました。

しかしながら、大会直前に予期せぬ出来事が起こりました。フランス代表は、ダニが「La vie à vingt-cinq ans」を歌う予定でしたが、4月2日にジョルジュ・ポンピドゥー大統領が死去したため、フランス国営放送ORTFは大会当日に大統領葬儀の中継を決定。フランスは急遽、大会への参加を辞退することになりました。前年度優勝者のアンヌ＝マリー・デヴィッド（ルクセンブルク代表）も、メダル授与のため出席予定でしたが、弔意を示すためキャンセルとなりました。フランスでは、1週間遅れの4月13日に、フランス語解説付きの録画放送が行われました。

大会を盛り上げるため、ドイツ公共放送連盟ARDは、2夜連続のプレビュー番組「ブライトン前奏曲」(Prélude à Brighton)を制作しました。この番組では、全出場者のプロモーションビデオのフルバージョンが放送されたほか、出場国の風景なども紹介されました。この番組は、欧州放送連合（EBU）が1994年まで必須条件としていたプレビュー番組の規範的存在となりました。

投票方法は、1970年の方式に戻りました。各国の審査員10名が、自国内で中継放送を鑑賞し、1人1票ずつ投票。各放送局は投票数を集計し、会場に電話連絡。会場のスコアボードに投票数が加算されていきました。

そして、栄えある優勝者は、スウェーデン代表のABBAでした。彼らの楽曲「恋のウォータールー」は、自国語以外の言語で歌い優勝した初の楽曲となりました。さらに、この曲は全米チャートトップ10入りを果たした初のユーロビジョン優勝楽曲という快挙も成し遂げました。（1967年の優勝曲「恋はみずいろ」は全米1位を記録しましたが、これは出場者のヴィッキーではなく、ポール・モーリアのカバー版でした。）「恋のウォータールー」は、2005年のユーロビジョン50周年記念番組で、歴代優勝曲ベスト1に選ばれました。

一方、2位となったイタリア代表ジリオラ・チンクェッティの「夢はめぐり来て」は、ある問題を抱えていました。イタリアでは5月12日に離婚法廃止の是非を問う国民投票が予定されており、キャンペーン期間中でした。この曲の原題が「Si（はい）」だったため、RAIイタリア放送協会は、国民投票への公正な選挙に悪影響を及ぼす可能性を懸念し、1ヶ月間この曲の国内放送を自粛しました。結果、イタリア国内では自国代表の曲が放送されないという異例の事態が発生しました。

各国の得点や、各楽曲の歌詞については、別途資料を参照ください。本大会は、政治情勢や社会情勢、そして音楽的にも様々な出来事が重なり合った、記憶に残る大会となりました。

もう一度検索