ヨウ化銅(I)

ヨウ化[銅]：多様な用途を持つ無機化合物

ヨウ化[銅] (CuI) は、白色の粉末状の無機化合物です。水には難溶性ですが、ヨウ化物イオンを含む濃厚な水溶液やアセトニトリルなどの溶媒中には錯体を形成して溶解します。自然界では希少鉱物であるマーシュ石として産出します。

合成法

実験室レベルでは、水溶性の[銅]イオンを含む溶液に、[ヨウ化ナトリウム]や[ヨウ化カリウム]などの[ヨウ化物]]イオン源を加えることで容易に合成できます。この際、最初に生成するヨウ化[[銅] (CuI₂ ) は、直ちにヨウ化[銅]とヨウ素に分解します。

化学式で表すと以下のようになります。

Cu²⁺ + 2I⁻ → CuI₂ → 2CuI + I₂

また、ヨウ化水素酸中で銅とヨウ素を加熱する方法でも合成可能です。

水に溶けにくいヨウ化[銅]ですが、NaI や KI の存在下では、直線型の CuI₂]⁻ イオンを形成し、溶解します。この溶液を水で薄めるとヨウ化[[銅]が析出し、この方法で高純度の無色結晶を得ることができます。

結晶構造

ヨウ化[銅]は温度によって異なる結晶構造を示します。390℃以下では閃亜鉛鉱型構造(γ-CuI)、390～440℃ではウルツ鉱型構造(β-CuI)、440℃以上では塩化ナトリウム型構造(α-CuI)となります。

用途

有機合成化学

ヨウ化[銅]は、有機合成化学において重要な役割を果たす化合物です。触媒、あるいは助触媒として、様々なクロスカップリング反応に用いられます。

特に、薗頭カップリング、ウルマン反応などのクロスカップリング反応においてその効果を発揮します。また、ヨウ化ナトリウムと併用することで、臭化アリールからヨウ化アリールへの変換に使用されます。ヨウ化アリールは、臭化アリールよりも高い反応性を示すため、この変換は様々なカップリング反応（薗頭カップリング、ヘック反応、鈴木・宮浦カップリング、右田・小杉・スティルカップリングなど）において重要です。

さらに、[福山透]]教授（東京大学）らの研究グループは、ヨウ化銅]と[[酢酸セシウムを用いた新規な芳香族アミノ化反応を開発し、複雑な天然物の全合成に応用しています。

近年では、チオシアン酸イミダゾリウムを添加して結晶を微細化することで、固体型色素増感太陽電池への応用も研究されています。

その他の用途

ヨウ化[銅]は、ヨウ化銀と同様に人工降雨剤としても使用されています。

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