ヨハンネス (西ローマ皇帝)

ヨハンネス・アウグストゥス：西ローマ帝国の対立皇帝

ヨハンネス・アウグストゥスは、5世紀の西ローマ帝国において、短いながらも激動の時代を生きた対立皇帝です。423年から425年までの在位期間は、政治的な陰謀と軍事的な衝突に彩られています。

ホノリウスの死とヨハンネスの擁立

423年8月15日、西ローマ皇帝ホノリウスが死去しました。東ローマ皇帝であり、ホノリウスの甥にあたるテオドシウス2世は、ホノリウスの死をすぐに公表しませんでした。この状況を利用したのが、貴族カスティヌスです。カスティヌスは、プリミケリウス（官僚）であったヨハンネスを皇帝に擁立しました。

プロコピウスは、ヨハンネスの資質について「温厚で素晴らしく恵まれ、勇敢な行為を十分に行うことができる」と称賛しています。また、ヨハンネスは、テオドシウス朝の皇帝とは異なり、キリスト教の全教派を容認する姿勢を示しました。

不安定な皇帝としての地位

しかし、ヨハンネスの皇帝としての地位は、最初から不安定でした。ガリアでは、ヨハンネスの前任者であったプラエフェクトゥス・プラエトリオが兵士の蜂起によって殺害され、アフリカ管区のコメスであったボニファキウスは、ローマへの穀物輸送を拒否しました。

歴史家のジョン・マシューズは「ヨハンネスの治世に起きた出来事は、その当初と同じくらい暗いものであった」と評しています。ヨハンネスは拠点をラヴェンナに移し、東ローマ帝国からの攻撃に備えました。アフリカへの遠征も試みられたようですが、結果は記録されておらず、失敗に終わったと考えられています。ガリアでは、聖職者を世俗の宮廷に召喚したことが問題を引き起こしたとされています。

テオドシウス2世との対立とアエティウスの派遣

ヨハンネスはテオドシウス2世との合意を望んでいましたが、テオドシウス2世がウァレンティニアヌス3世をカエサル、次いでアウグストゥスに任じたことで、戦うことを決意します。424年後半、ヨハンネスは自身が最も信頼する人物の一人であったアエティウスに重要な任務を与えます。当時、宮殿総督であったアエティウスは、かつて人質として暮らしていたフン族に軍事援助を求めるために派遣されました。

東ローマ帝国の侵攻とヨハンネスの失脚

アエティウスが不在の間、テオドシウス2世が送り込んだ東ローマ軍がテッサロニカからイタリアに上陸し、アクイレイアに陣を構えました。主要な情報源ではラヴェンナが略奪されたとされていますが、アンティオキアのヨハネスは、羊飼いがアスパル率いる東ローマ軍を都市を守る沼地に案内したと述べています。歴史家のスチュワート・オーストは、アスパルの父親であるアルダブリウスがラヴェンナの守備隊を説得し、ヨハンネスを裏切らせたと考えています。

歴史家のエイドリアン・ゴールズワーシーは、ヨハンネスの失脚について「かなりの裏切りに加えて、東ローマ軍と海軍の強力な部隊による激しい戦いが繰り広げられた」と述べています。捕らえられたヨハンネスはアクイレイアに移送され、 প্রথমে手を切り落とされ、その後、ロバに引き回されて市民の面前で晒し者にされました。そして、425年6月または7月に斬首刑に処されました。

アエティウスの帰還とその後

ヨハンネスの死から3日後、アエティウスはフン族の軍勢を率いて帰還しました。小競り合いの後、アエティウスはウァレンティニアヌス3世の摂政であったガッラ・プラキディアと合意し、その後の30年間の西ローマ帝国の政治情勢を確立しました。フン族は帰還し、アエティウスはマギステル・ミリトゥム（軍司令官）の地位を得ました。

ヨハンネス・アウグストゥスの生涯は、西ローマ帝国の衰退期における権力闘争と政治的陰謀を象徴しています。彼の短い在位期間は、帝国の不安定さと、その後の混乱を予感させるものでした。

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