ヨハン・カール・フリードリヒ・レルシュタープ

ヨハン・カール・フリードリヒ・レルシュタープは、1757年2月27日に生まれ、1813年8月19日に没したドイツの音楽家です。作曲家としてだけでなく、作家、音楽出版者、そして音楽評論家としても活動しました。彼は特にベルリンで精力的に活動し、当時のベルリンの音楽界において非常に影響力のある存在でした。

生涯と音楽への道

レルシュタープは幼少期から音楽教育を受けました。鍵盤楽器の演奏はヨハン・フリードリヒ・アグリコーラに師事し、作曲はカール・フリードリヒ・クリスティアン・ファッシュのもとで学びました。両者ともベルリンを拠点とする高名な音楽家であり、レルシュタープは幼い頃から質の高い音楽教育を受ける機会に恵まれました。

1779年、彼は父の印刷業を継ぐことになりました。この頃、ハンブルクにいた高名な作曲家C.P.E.バッハのもとでさらなる研鑽を積む計画がありましたが、家業の継承のためこれは叶いませんでした。しかし、音楽への強い情熱を抱き続けていたレルシュタープは、家業である印刷事業を音楽関連の方向に転換させていくことを決意します。

多角的な音楽事業の展開

家業を継いだレルシュタープは、音楽への関心を事業に活かしました。1783年には楽譜の貸し出し業を開始し、人々がより手軽に楽譜に触れられる機会を提供しました。さらに1785年頃には楽譜出版の子会社を設立し、自ら楽譜を出版する事業に乗り出しました。これは当時のベルリンにおける音楽普及において重要な役割を果たしたと考えられます。事業は多角化を進め、その後は楽器製作や、楽譜台などの音楽に関連する備品の販売なども手掛けるようになりました。このように、レルシュタープは単なる作曲家や評論家にとどまらず、音楽産業の幅広い分野に携わる企業家として、ベルリンの音楽市場の形成と発展に貢献したのです。

作曲家としての側面

レルシュタープは多忙な事業活動の傍ら、作曲も行いました。彼の作品には、宗教音楽として「テ・デウム」やミサ曲が1曲ずつ、そして多数のカンタータやリート（歌曲）があります。また、舞台作品としてジングシュピール（ドイツ語による歌芝居）「Die Apotheke（薬局）」も手掛けています。これらの作品は、彼の音楽家としての才能を示すものです。

家族

レルシュタープの家族もまた音楽や文学の分野で知られています。

彼の息子であるルートヴィヒ・レルシュタープも父と同じく音楽批評家であり、また詩人としても活動しました。ルートヴィヒが手掛けた詩は、後にフランツ・シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」に用いられ、特に有名になりました。

また、レルシュタープの長女であるカロリーネ・レルシュタープ（1793年-1813年）は優れた歌手でした。彼女はf‴（3点ヘ音）に達する非常に広い声域を持つことで知られており、その才能を活かして活動しました。1811年からはブレスラウ（現在のポーランド、ヴロツワフ）で歌っており、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのオペラ「魔笛」における夜の女王役は、彼女の代表的な役柄として特に高く評価されました。娘の夭逝は父にとって大きな悲しみであったと思われます。

このように、ヨハン・カール・フリードリヒ・レルシュタープは、ベルリンの音楽界において作曲、執筆、出版、商業活動といった多岐にわたる分野で活動し、その影響力は彼自身だけでなく、家族を通して後世にもつながっています。

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