ヨーガ学派

ヨーガ学派：解脱への実践的哲学

ヨーガ学派は、古代インドの哲学体系である正統バラモン教（インド哲学）の一派です。その目的は、ヨーガの修行を通して解脱（解脱）に至ることです。現代では、六派哲学の一つに数えられています。

サーンキヤ学派との関連性と独自性

ヨーガ学派は、厳格な二元論を特徴とするサーンキヤ学派と密接な関係にあります。サーンキヤ学派の形而上学を基礎としつつも、ヨーガ学派は独自性を有しています。最大の差異は、自在神（イーシュヴァラ）の存在を認めている点です。サーンキヤ学派は無神論または非神論であるのに対し、ヨーガ学派は、修行における祈念の対象として自在神を位置付けています。

ヨーガ学派の聖典は『ヨーガ・スートラ』です。ヴィヤーサによる注釈書『ヨーガ・バーシャ』（別名『ヨーガ・シャーストラ』）や、ヴァーチャスパティ・ミシュラによる復注『タットヴァ・ヴァイシャーラディー』なども重要な文献とされています。これらの文献には、仏教やジャイナ教の影響も認められますが、ヨーガ学派独自の思想体系が確立されています。

心の作用と潜在印象（サンスカーラ）

ヨーガ学派は、心の作用の止滅を主目的とする実践的な哲学です。心の作用、そして潜在印象（サンスカーラ、過去の経験や思考が心に刻まれた痕跡）の探求に重点を置いています。サンスカーラは煩悩の根源とされ、ヨーガ修行においては、サンスカーラの影響から解放されることが目指されます。

サーンキヤ・ヨーガ体系では、心は絶えず変化し、その変化に伴ってサンスカーラが生成すると考えられています。修行は、修習と離欲を繰り返す、一見矛盾するような過程を経て、煩悩を断ち、サンスカーラに囚われない境地に至ることを目指します。この心の理論には仏教の影響が見られますが、ヨーガ学派は独自の体系を構築しています。

修行を通して超能力が身につくと考えられてきましたが、古典ヨーガにおいては、超能力の獲得自体は最終目的ではありません。

師と自在神

ヨーガ学派では、師による直接指導が不可欠とされました。しかし、適切な師が見つからない場合、あるいは師の系譜を無限に遡及する問題を避けるため、最初の師、師の中の師として自在神が想定されたと考えられています。自在神は聖音オームで表象され、オームの復誦を通して三昧（瞑想状態）の境地に至ることが目指されます。

歴史と現代

後期には、一元論のヴェーダーンタ学派の影響が強まり、ヨーガ学派は変容または衰退しました。多くの修行者はシヴァ神やヴィシュヌ神を信仰するようになり、ヨーガ学派の伝統は変化を遂げました。15世紀頃には『ヨーガ・スートラ』は忘れ去られましたが、19世紀にイギリス人インド学者コールブルックによって再発見され、その後、インドの文化復興運動の中で注目を集めるようになりました。現在、世界中で実践されているヨーガは、古典ヨーガとは異なる面も持ち合わせていますが、『ヨーガ・スートラ』は依然として重要な聖典として位置付けられています。

ヨーガ学派の思想は、心の探求と実践を通して解脱を目指す、深く複雑な哲学体系です。その歴史と影響は、現代のヨーガにも色濃く残っています。

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