ヨーロッパ放送地区

ヨーロッパ放送地区（EBA）とは

ヨーロッパ放送地区（European Broadcasting Area: EBA）は、国際電気通信連合（ITU）の無線通信規則によって定義される地域です。この地域は、単に地理的なヨーロッパを指すのではなく、無線通信の周波数帯域の割り当てや放送サービスの調整を目的として、特定の国や地域を包括する概念です。日本語ではヨーロッパ放送地域とも訳されます。

EBAの範囲

興味深いことに、EBAにはヨーロッパ以外の地域が含まれている一方で、ヨーロッパの一部地域が除外されています。例えば、2007年までは、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアはEBAの範囲外とされていましたが、同年の世界無線通信会議（WRC-07）でEBAの対象に拡大されました。逆に、ヨーロッパに位置するITU加盟国の中で、カザフスタンはEBAの範囲外となっています。しかし、カザフスタンは欧州評議会に加盟する資格を有しており、この点がEBAの定義の複雑さを示唆しています。

EBAの境界は、19世紀から20世紀初頭にかけて、電信線で接続された地域を起源としています。この歴史的な背景が、現在のEBAの範囲に影響を与えていると考えられます。

EBAと欧州放送連合（EBU）

EBAは、欧州放送連合（EBU）への積極的な参加と、それに伴うユーロビジョン・ソング・コンテストへの参加資格を定める上で重要な役割を果たしています。EBUは、ヨーロッパ地域を中心に、放送事業者間の協力と発展を促進する組織です。

2017年11月現在、EBUには56か国から73の正会員組織、21か国から33の準会員組織が加盟しており、さらに7つの組織が参加を承認されています。これらの会員構成からも、EBAが地理的なヨーロッパに留まらない、広範な地域をカバーしていることがわかります。

EBAに含まれる国と地域

EBAには、ITUに加盟している国々だけでなく、一部の属領や国家承認が限られている地域も含まれています。これらの地域は、ITUやEBUへの加盟資格を持たないものの、放送に関する取り決めにおいてはEBAの一部として扱われます。

ITU加盟国

EBAの主要な構成要素は、ITUに加盟している国々です。これらの国々は、無線通信に関する国際的なルールや規制に従い、放送サービスを提供しています。

属領・海外領土

以下の地域は属領または海外領土であり、独自の主権を持たないため、ITUやEBUには加盟できませんが、EBAの範囲内とされています。

アクロティリおよびデケリア - イギリスの海外領土
フェロー諸島 - デンマーク王国の構成国
ジブラルタル - イギリスの海外領土
ガーンジー島 - イギリスの王室属領
マン島 - イギリスの王室属領
ジャージー島 - イギリスの王室属領

一部の国からしか国家承認されていない国

以下の地域は、一部の国からしか国家承認されていない、または係争中の地域であり、ITUやEBUに加盟できません。

アブハジア - ジョージアは自国の一部と主張
アルツァフ共和国 - アゼルバイジャンは自国の一部と主張
コソボ - セルビアは自国の自治州と主張
北キプロス - キプロスは自国の一部と主張
パレスチナ - イスラエルとの間で紛争中
南オセチア - ジョージアは自国の一部と主張
沿ドニエストル共和国 - モルドバは自国の構成体と主張
クルディスタン地域（シリアのロジャヴァを含む） - イラクの自治地域。トルコ、シリア、イランが領有を主張。

まとめ

ヨーロッパ放送地区（EBA）は、単なる地理的な概念ではなく、無線通信と放送サービスにおける国際的な連携を促進するための枠組みです。EBAは、欧州放送連合（EBU）の活動を支え、ユーロビジョン・ソング・コンテストのような国際的なイベントの開催にも影響を与えています。EBAの定義は、歴史的な背景や政治的な状況にも左右されるため、常に変化する可能性があります。したがって、EBAの範囲を理解することは、国際的な放送活動を理解する上で重要です。

関連項目

国際電気通信連合 (ITU)
ITU地域

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