ライク・ラースロー

ライク・ラースロー：ハンガリー共産党の悲劇

ライク・ラースロー（1909年5月8日 - 1949年10月15日）は、ハンガリーの共産党員、政治家、そして内務大臣として、その名を歴史に刻みました。しかし、彼の運命は、共産党内の権力闘争と、スターリンを背景にしたラーコシ・マーチャーシュとの対立によって、悲劇的な結末を迎えることになります。

生い立ちと共産主義への傾倒

ライクは、オーストリア・ハンガリー帝国統治下のトランシルヴァニアで、靴職人の息子として生を受けました。エトヴェシュ・ロラーンド大学に進学後、間もなく非合法下のハンガリー共産党に加入し、共産主義活動家として活動を開始します。大学から退学処分を受けた後も、建設作業員として労働組合の組織化に奔走しました。1936年にはプラハへ脱出し、翌年にはスペイン内戦に参加。政治委員として活動しますが、敗戦によりフランスへ亡命し、抑留生活を送ります。1941年にハンガリーへ帰国し、地下活動中の共産党中央委員となりましたが、1944年12月に矢十字党の特殊部隊に逮捕されてしまいます。処刑寸前まで追い込まれましたが、実兄エンドレの尽力により減刑され、釈放されました。

政界での台頭と失脚

釈放後、ライクはハンガリーに戻り政党政治に参加。共産党（MKP）指導部と臨時議会に加わると、1946年3月20日には内務大臣に任命されます。内務大臣として、彼は共産党の私兵部隊と、秘密警察組織を組織し、反対勢力の弾圧を指揮しました。宗教団体、国民的組織、民主組織、独立組織など、約1500もの団体が禁止・解散させられ、見せしめの裁判が行われました。1948年8月5日から1949年5月20日までは外務大臣を務めましたが、ラーコシはライクを自身の権力の脅威と見なし、偽りの告発によって1949年に逮捕しました。

見せしめ裁判と処刑

ライクは、チトーのスパイ、西側の帝国主義者の手先、資本主義復活を目論む者として起訴されました。収監中には拷問を受け、告発内容を認めれば釈放されると約束されました。そして、1949年9月、彼は全ての罪を自白します。しかし、約束は反故にされ、共に起訴された18人とともに死刑判決を受けました。この裁判は、スターリンによる反チトー粛清の始まりであり、東欧における一連の粛清裁判の先駆けとなりました。ライクの裁判は、1952年のチェコスロバキアにおけるルドルフ・スラーンスキーらの粛清裁判へと連鎖していくことになります。

名誉回復と再評価

ラーコシによるライクの裁判は、スターリンが反チトー主義へと傾倒していく転換点となりました。また、この裁判は、ハンガリーにおける全政党の排除の始まりでもありました。粛清により国家経済は疲弊し、資本不足から建設プロジェクトは停滞。多くの知識人が肉体労働に従事せざるを得なくなり、インフラの不備や粗悪な製品が蔓延しました。さらに、政府は国内のスパイ網に人員を割き、経済を維持するための生産的な活動に十分な人員を配置することができませんでした。

ラーコシの支配に対する不満が高まる中、1956年3月28日に大規模なデモが発生。ライクは、自身が設立に関わった秘密警察 ÁVH の行き過ぎた行動に対する責任にもかかわらず、名誉を回復しました。この名誉回復演説は、公表されなかったものの、ライクに大きな影響を与えました。ラーコシはライクの罪状をその後の粛清の説明に利用していたため、自身の過ちを認めざるを得なくなった結果、ラーコシの権威は失墜しました。1956年10月6日、ライクは粛清で命を落とした他の3名とともに改葬されました。妻のユーリア・ライクは、夫の名誉回復に尽力し、彼女の尽力により、葬儀には35万人もの人々が参列しました。この大規模な動員は、10月23日に始まるハンガリー動乱の先駆けとなりました。

ライク・ラースローの生涯は、共産主義の理想と現実、権力闘争の残酷さ、そして個人の尊厳が踏みにじられる歴史の縮図と言えるでしょう。彼の悲劇は、ハンガリー現代史における重要な教訓として、今もなお語り継がれています。

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