ライノー重装甲車

ライノー重装甲車：試作に終わったオーストラリアの戦車開発

第二次世界大戦下のオーストラリア。激化する戦況の中、イギリス軍は植民地への装甲戦闘車両の供給が困難に陥っていました。この状況を打開すべく、イギリス連邦各国は、自国独自の装甲戦闘車両の開発を余儀なくされました。オーストラリアも例外ではなく、国家的な努力が注がれることとなります。

オーストラリア陸軍は、1941年末、重装甲車の開発計画に着手します。その構想に基づき、2種類の試作車体と砲塔が製作され、1942年には同一の車体を用いた試験が行われました。しかし、この車両開発計画は、克服できない技術的問題に直面することになります。車両は過大な重量に悩まされ、1943年には計画は残念ながら断念せざるを得ない状況に陥りました。

ライノー重装甲車は、カナダ軍のフォックス装甲車にも用いられたCMPトラックのシャーシを流用していました。その心臓部には、ゼネラルモーターズ製の8446型後部配置エンジンを搭載。このエンジンは、車両の駆動力を支える重要な要素でした。装甲に関しては、前面には30mm厚のオーストラリア防弾装甲（ABP-3）が、側面と後部には11mmの装甲が施され、防御力強化が図られていました。さらに、クルセーダー巡航戦車と同型の砲塔（30mmの全周装甲）を搭載。この砲塔には、主砲としてQF 2ポンド砲、そして同軸機関銃として7.7mmヴィッカース重機関銃が装備されていました。

装甲兵員輸送車（APC）の役割も想定されており、砲塔のないオープントップ型の先行試作車も1輌製作されました。しかし、この試作車両も、他の試作車と同様に、量産化されることなく、歴史の影に埋もれていくことになります。

ライノー重装甲車の開発計画は、様々な技術的課題や戦争の激化という厳しい現実の前に屈することとなりました。オーストラリア軍による独自の装甲車両開発の試みは、多くの教訓を残しながら、試作段階で終幕を迎えたのです。この計画の失敗は、当時オーストラリアが抱えていた技術力や生産能力、そして戦争遂行能力における限界を浮き彫りにしました。

この車両に関する資料は限られていますが、Michael K. Cecil著『Australian Military Equipment Profiles vol. 3, Australian Scout and Armoured Cars 1933 to 1945』(1993年、Australian Military Equipment Profiles, ISBN 0-646-14611-4)などが貴重な情報源となっています。この書籍には、ライノー重装甲車だけでなく、オーストラリア軍が第二次世界大戦期に運用した様々な装甲車両に関する詳細な記述があり、当時の技術水準や軍事的状況を理解する上で非常に役立ちます。また、オンライン上でも「Australian CMP Based Armoured Vehicles」といった関連情報を探し出すことが可能です。これらの資料を参考に、ライノー重装甲車の開発計画に関するより深い理解を深めることができるでしょう。

ライノー重装甲車は、オーストラリアが独自の装甲戦闘車両開発に挑んだ、重要な試みの一つでした。その成功は収まらなかったものの、この経験は、後のオーストラリア軍の装備開発に貴重な教訓を残したことは間違いありません。戦争という極限状況下における開発の難しさ、そして技術力と現実の乖離を改めて認識させられる事例と言えるでしょう。

もう一度検索