ライフ (スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバム)

スライ＆ザ・ファミリー・ストーン『ライフ』

1968年に発表されたスライ＆ザ・ファミリー・ストーンのスタジオ・アルバムとしては3作目にあたる作品が『ライフ』（Life）である。この時期のバンドは、ファンク、ソウル、ロック、サイケデリックといった多様な音楽要素を融合させ、独自のサウンドを確立しつつあった。

音楽性と特徴

本作は、前作『ダンス・トゥ・ザ・ミュージック』で提示した革新的なファンク・サウンドを基盤としつつも、さらなる音楽的探求が見られる点が大きな特徴だ。サウンドプロダクションにおいては、サイケデリックな要素やファズ・ギターが積極的に取り入れられ、バンドの表現の幅が拡大している。これは、当時の音楽シーンにおけるサイケデリック・ムーブメントの影響をバンドが吸収していたことを示唆している。音楽評論家のステファン・トーマス・アールワインは、オールミュージックでのレビューにおいて、こうした音響的な変化に加えて、「Chicken」のような一見シンプルに聞こえる楽曲においても、作曲の技量が著しく向上し、研ぎ澄まされている点を指摘。このアルバムを高く評価し、5段階評価で4.5点を与えている。

アルバムに収録されている楽曲の中でも、「プラスティック・ジム」は特に注目すべき一曲である。この曲の繰り返し現れる印象的なフレーズは、ザ・ビートルズの楽曲「エリナー・リグビー」から影響を受けたとされている。異なるジャンルの楽曲からインスピレーションを得るというスライ・ストーンの柔軟な音楽性が現れている。

商業的成績

商業的な成功という点では、アメリカ国内でのチャート成績は前作ほど振るわなかった。Billboard 200チャートにおいては最高位195位に留まっている。しかしながら、本作からは「マ・レディー」と「ライフ」が両A面シングルとしてカットされ、Billboard Hot 100チャートで93位にランクインした。また、「マ・レディー」はイギリス市場でもシングルリリースされ、全英シングルチャートで32位を記録するなど、アメリカ以外の市場では一定の成果を見せた。

イギリス盤

興味深い点として、本作はイギリス市場においては『M'Lady』という異なるアルバムタイトルでリリースされた。さらに、アルバムのジャケットデザインもアメリカ盤とは大きく変更されており、各国で異なる仕様が存在する点は、当時のレコード流通における多様性を物語っている。

リマスター盤におけるボーナストラック

本作は、後年のCD再発において、オリジナルの収録曲に加えボーナストラックが追加されたバージョンがいくつか存在している。

1995年リマスター盤: このバージョンには、オリジナル盤には未収録であった楽曲「オンリー・ワン・ウェイ・アウト・オブ・ディス・メス」がボーナストラックとして追加収録された。
2007年リマスター盤: 2007年にリリースされたリマスター盤では、1995年盤に収録されていた「オンリー・ワン・ウェイ・アウト・オブ・ディス・メス」は削除され、代わりに以下の4曲が新たなボーナストラックとして追加されている。
ダイナマイト!（シングル・ヴァージョン） - "Dynamite! (Single Version)"
セヴン・モア・デイズ - "Seven More Days"
プレッシャー - "Pressure"
ソロウ - "Sorrow"

これらの違いは、リマスター盤のバージョンによってアルバム体験が異なることを示しており、ファンはそれぞれのバージョンで異なる未発表音源などを楽しむことができる。

収録曲

オリジナル盤に収録された全11曲は、すべてバンドのリーダーであるシルヴェスター・スチュアート、すなわちスライ・ストーンによって書かれたものである。

1. ダイナマイト! - "Dynamite!" (2:46)
2. チキン - "Chicken" (2:14)
3. プラスティック・ジム - "Plastic Jim" (3:31)
4. ファン - "Fun" (2:23)
5. イントゥ・マイ・オウン・シング - "Into My Own Thing" (2:15)
6. ハーモニー - "Harmony" (2:52)
7. ライフ - "Life" (3:02)
8. ラヴ・シティ - "Love City" (2:44)
9. アイム・アン・アニマル - "I'm an Animal" (3:22)
10. マ・レディー - "M'Lady" (2:46)
11. ジェーン・イズ・ア・グルーピー - "Jane Is a Groupee" (2:50)

参加ミュージシャン

本作のレコーディングに参加した主なミュージシャンは以下のメンバーである。スライ＆ザ・ファミリー・ストーンの核となるメンバーに加え、ホーンセクションやバッキングボーカルが参加している。

スライ・ストーン - ボーカル、オルガン
フレディ・ストーン - ギター、ボーカル
ローズ・ストーン - エレクトリックピアノ、ボーカル
ラリー・グラハム - ベース、ボーカル
グレッグ・エリコ - ドラムス、パーカッション
シンシア・ロビンソン - トランペット
ジェリー・マルティーニ - サックス
エルヴァ・ムートン - バッキング・ボーカル

本作『ライフ』は、その後の彼らの代表作へと繋がる過渡期における重要なアルバムであり、サイケデリックな色彩を強めたファンク・サウンドが魅力の一枚と言える。

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