ラインハルト作戦

ラインハルト作戦：ナチスによるユダヤ人大量虐殺

ラインハルト作戦（Aktion Reinhardt）は、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによって実行されたユダヤ人大量虐殺作戦です。この作戦は、東ヨーロッパ各地のゲットー（ユダヤ人隔離居住区）を解体し、そこに住むユダヤ人をベウジェツ、ソビボル、トレブリンカという三大絶滅収容所へ移送し、組織的に殺害することを目的とした、ホロコーストの一環です。

作戦の背景と準備

当初、ナチスはユダヤ人を東方へ追放する計画を立てていましたが、独ソ戦の長期化により実現が困難になりました。そこで、東ヨーロッパのゲットーに収容されていたユダヤ人の処遇が問題となり、最終的に彼らを殺害するという決定に至りました。

このユダヤ人虐殺作戦は、国家保安本部長官ラインハルト・ハイドリヒのファーストネームにちなんで「ラインハルト作戦」と命名されました。作戦の準備は1941年10月頃から開始され、1942年3月中旬から1943年11月初旬にかけて実行されました。

作戦の実行体制

作戦の実行責任者は、ルブリン地区親衛隊及び警察指導者オディロ・グロボクニク親衛隊少将でした。グロボクニクは、ポーランド総督府領全体の親衛隊及び警察高級指導者フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリューガー親衛隊大将の指揮下にはありましたが、ラインハルト作戦においては親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーに直属し、クリューガーの指揮を受けませんでした。実質的な作戦指揮は、グロボクニクの副官であるヘルマン・ヘーフレ親衛隊大尉が担い、各地域の親衛隊及び警察指導者と連携して、ゲットーからのユダヤ人の移送を指揮しました。

三大絶滅収容所の建設と作戦の展開

ラインハルト作戦のために、ポーランド総督府領内にベウジェツ、ソビボル、トレブリンカの三大絶滅収容所が建設されました。作戦は、1942年3月からルブリン・ゲットーやルヴフ・ゲットーの撤去作戦として始まり、7月にはワルシャワ・ゲットーでも同様の作戦が展開されました。8月には、総督府全体にゲットーの撤去作戦が拡大し、1942年中にワルシャワ・ゲットーを除くほぼすべての都市のゲットーが解体されました。ゲットーから移送されたユダヤ人たちは、それぞれの絶滅収容所に送られ、殺害されました。ベウジェツでは1942年3月から、ソビボルでは5月から、トレブリンカでは7月から、一酸化炭素ガス室でユダヤ人やロマ民族の大量殺戮が開始されました。

作戦の終結と隠蔽工作

1943年になると、ドイツの戦況が悪化し始め、まずベウジェツ収容所が閉鎖されました。その後、トレブリンカとソビボルでも囚人による脱走事件が発生したことをきっかけに、閉鎖へと向かいました。1943年11月までには、3つの収容所すべてが消滅し、ラインハルト作戦は終結しました。

ナチスは、これらの収容所を跡形もなく解体し、さらに跡地には植林を施して、証拠隠滅を図りました。ラインハルト作戦の終結後、絶滅政策はアウシュヴィッツ＝ビルケナウ強制収容所やマイダネク強制収容所、ヘウムノ強制収容所などが中心となりました。

虐殺数

ラインハルト作戦によって虐殺されたユダヤ人の数は、数十万人に上ると推定されています。

関連事項

ポーランド総督府
収穫祭作戦
コルヘア報告

参考文献

マーチン・ギルバート 著、滝川義人 訳『ホロコースト歴史地図 1918-1948』東洋書林、1995年。ISBN 978-4887210813。
栗原優『ナチズムとユダヤ人絶滅政策：ホロコーストの起源と実態』ミネルヴァ書房、1997年。ISBN 978-4623027019。
芝健介『ホロコースト：ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌』中央公論新社〈中公新書〉、2008年。ISBN 978-4121019431。
* マイケル・ベーレンバウム 著、石川順子; 高橋宏 訳『ホロコースト全史』創元社、1996年。ISBN 978-4422300320。

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