ラインメタルFG42自動小銃

FG42：ドイツ降下猟兵のために生まれた多目的自動小銃

FG42（Fallschirmjägergewehr 42）は、第二次世界大戦中にドイツのラインメタル社が開発した自動小銃です。「42年式降下猟兵小銃」を意味し、降下猟兵の運用を想定して設計されました。この銃は、小銃、短機関銃、軽機関銃の役割を一台で果たすことを目指し、後のアサルトライフルに繋がる革新的なコンセプトを持っていました。

開発の背景

1941年のクレタ島の戦いで、ドイツ空軍の降下猟兵部隊は大きな損害を被りました。当時の落下傘の構造上、着地時に小銃や機関銃を携行することが難しく、これらの装備はコンテナに格納して別途投下する必要がありました。そのため、降下兵は着地後、装備を回収するまで戦闘に参加できず、大きなリスクを抱えていました。この経験から、軽量で十分な火力を持つ降下猟兵専用の自動小銃の開発が急務となりました。

当時、ドイツ陸軍と武装親衛隊にはGew41半自動小銃が支給されていましたが、空軍総司令官ヘルマン・ゲーリングは降下猟兵にはより進歩した自動火器が必要だと主張しました。要求された性能は以下の通りです。

既存の7.92x57mm小銃弾を使用
フルオート射撃が可能
全長1m以下で、従来の小銃と同等かそれ以下の重量
狙撃銃としても使える精度
小銃擲弾が発射可能
白兵戦に耐えられる強度

これらの要求は非常に高く、陸軍兵器局は計画への参加を拒否しました。そのため、空軍は独自に開発メーカーを探すことになり、ラインメタル社とクリークホフ社が開発に名乗りを上げました。最終的にラインメタル社の設計案が採用され、クリークホフ社が製造を担当することになりました。

設計と特徴

ラインメタル社の設計を手掛けたのは、ルイス・シュタンゲ技師です。彼の設計は、フルオート射撃時の安定性を確保するため、直線的な銃床と内部バッファシステムを採用しました。また、降下時に装具と絡まらないように、折り畳み式の照門と照星、深い角度の付いたピストルグリップが設けられました。初期モデルには、弾倉に直接弾薬を装填するための溝がありました。

大きな特徴として、フルオート射撃時にはオープンボルト、セミオート射撃時にはクローズドボルトで作動する点が挙げられます。これにより、フルオート射撃時の過熱を防ぎ、セミオート射撃時の命中精度を向上させることができました。

初期モデルの重量は4.2kgと、8mm級の自動火器としては軽量で、StG44よりも軽かったです。全長も短く、取り回しやすさを追求した設計でした。

撃発はストライカー式で、ボルトキャリアがストライカーを兼用することで、部品数の削減と機関部の小型化を実現しました。ガス圧利用方式はロングストロークピストン式、ボルトの閉鎖機構はロータリーボルト式です。銃身の下にはスパイク形状の銃剣を装着することができ、白兵戦にも対応可能でした。

同時期には7.92x33mmクルツ弾の開発も進められており、シュタンゲはこの新型弾こそがFG42に適していると考えていましたが、空軍は使用弾薬の変更を認めませんでした。

生産と実戦投入

1942年4月、ラインメタル社から試作銃が発表され、テスト後に3,000丁が製造されました。しかし、陸軍兵器局はFG42を欠陥品と指摘し、空軍は再設計を余儀なくされました。その結果、初期の量産型であるE型が完成しました。

最初の実戦投入は、1943年5月のロードス島の戦いでした。この戦いでFG42は高い評価を受け、その後、グラン・サッソ襲撃作戦にも投入されました。これらの戦いでFG42の有効性が認められ、ヒトラーもその必要性を認めることとなりました。1944年8月からはG型の量産が開始されました。

運用上の課題と改良

FG42は、降下猟兵による運用でいくつかの弱点が明らかになりました。左側面に装着する20発入り弾倉は銃のバランスを崩し、比較的短い銃身は機関銃としての威力を低下させました。また、7.92x57mmモーゼル弾によるマズルフラッシュは射手の位置を露呈させ、視界を遮ることもありました。さらに、フルサイズのライフル弾は激しい反動を生み、バイポッドには固定機構がなかったため、射撃時に折り畳まれてしまうことがありました。

これらの問題を解決するため、FG42は改良されました。レシーバーが大型化され、ハンドガードと銃床も大型化されました。銃床は金属製から木製に、ピストルグリップは樹脂製に変更されました。バイポッドは前方へ開く方式に変更され、固定機構も追加されました。また、フラッシュサプレッサーも改良されました。

最終的な製造数は5,000丁から7,000丁程度とされており、生産数は決して多くありませんでした。

バリエーション

FG42には多くのバリエーションがありますが、主に量産されたのはE型とG型です。初期量産型のE型は、角度の付いた特徴的なグリップを持ち、レシーバーは削り出しのスチール製でした。バッファ付きの銃床はプレス加工された金属製で、二脚はフォアアームのすぐ前に設けられていました。

後期量産型のG型は、レシーバーがプレス加工に変更され、グリップは垂直に近い形状に改められました。排莢口にはバネ式のカバーとデフレクターが追加され、銃床は木製になりました。二脚は銃口のすぐ後ろに設けられ、安全装置とファイアセレクターは別々のレバーになりました。

戦後の影響

FG42のガスオペレーション式の機構は、戦後のアメリカ陸軍の技術者達に高く評価されました。ブローニングM1919重機関銃に代わる汎用機関銃の開発に際し、FG42の設計が参考にされ、M60機関銃の開発にも影響を与えました。

また、アメリカのSMG Guns社は、FG42を模した半自動小銃を設計し、現在でもその技術が継承されています。

登場作品

FG42は、数多くの漫画、アニメ、小説、ゲームに登場しています。

漫画・アニメ：『HELLSING』、『うぽって!!』、『銀河連合日本』、『犬狼伝説』、『人狼 JIN-ROH』
小説:『平和への弾痕』、『ドイツ軍召喚ッ! 〜勇者達に全てを奪われたドラゴン召喚士、元最強は復讐を誓う〜』
ゲーム：『Men of War: Assault Squad』、『コール オブ デューティシリーズ』、『ドールズフロントライン』、『バトルフィールドシリーズ』、『ブラザー イン アームズ 名誉の代償』、『Enlisted』

これらの作品を通して、FG42は第二次世界大戦の象徴的な銃器として、その存在を知られています。

脚注

詳しい情報は、以下のリンクを参照してください。

Modern Firearms （英語）
ディートリッヒ社 （ドイツ語）
U.S WWII Intelligence Report on FG42 （英語）
FG42 - ウェイバックマシン（2003年4月7日アーカイブ分） （英語）

関連項目

小銃・自動小銃等一覧
MP40
StG44 (突撃銃)
* グロスフスMG42機関銃

もう一度検索