ライヴ・オーヴァー・ヨーロッパ 2007

ジェネシス復活の記録

『ライヴ・オーヴァー・ヨーロッパ 2007』（Live over Europe 2007）は、英国を代表するプログレッシブ・ロック・バンド、ジェネシスが2007年に発表したライブ作品です。これは、同年開催された再結成ツアー「ターン・イット・オン・アゲイン・ワールド・ツアー」の中から、ヨーロッパ各地でのパフォーマンス音源を収録したものです。

待望の再結成ツアー

長らくバンド活動から離れていたドラマー兼ボーカリストのフィル・コリンズがこのツアーのために復帰を果たしました。レギュラーメンバーであるマイク・ラザフォード（ギター、ベース）、トニー・バンクス（キーボード）に加え、長年バンドを支えてきたサポートメンバー、ギタリストのダリル・ステューマー、そしてドラマーのチェスター・トンプソンも参加した布陣で、ジェネシスは2007年6月11日のフィンランド、ヘルシンキ公演を皮切りに、約10年ぶりとなる大規模なツアーをスタートさせました。

バンドはヨーロッパ各地を巡った後、アメリカ大陸にも渡り、精力的なライブ活動を展開しました。特に、イタリアのローマにある古代遺跡チルコ・マッシモで行われたフリー・コンサートには、実に50万人もの観衆が集まり、その圧倒的な人気の健在ぶりを示しました。このローマ公演の模様は、後に『ホエン・イン・ローマ...ジェネシス 2007』というタイトルで映像作品としてもリリースされています。

アルバム構成とその魅力

本作は、単一公演ではなく複数の都市でのライブ音源を編集して構成されています。しかし、そのトラックリストは実際のツアーで披露されたセットリストの進行を忠実に再現しており、リスナーはライブ体験に近い感覚で楽しむことができます。また、各楽曲には収録された公演地が明記されているのも特徴的です。

選曲は、フィル・コリンズ、マイク・ラザフォード、トニー・バンクスのトリオ編成期に発表されたヒット曲や代表曲が中心を占めています。一方で、ピーター・ガブリエルやスティーヴ・ハケットもメンバーだった、よりプログレッシブな初期の時代の楽曲も多数披露されています。「イン・ザ・ケイジ」を含むメドレーや「アイ・ノウ・ホワット・アイ・ライク」、「カーペット・クローラーズ」などがその例です。初期の代表曲である「ファース・オブ・フィフス」は、今回はインストゥルメンタル部分のみが抜き出されて演奏されています。

ユニークなパフォーマンス

特に注目すべきパフォーマンスの一つに、「カンバセイションズ・ウィズ・2・ストゥールズ」があります。これは、フィル・コリンズとチェスター・トンプソンという二人の名手によるドラム・インストゥルメンタルです。このパートは、文字通り「椅子（ストゥール）」をドラムスティックで叩くというユニークなアイデアから始まり、次第に本格的なドラム・バトルへと移行していくという構成で、ライブの大きな見どころとなりました。トニー・バンクスは後年、コリンズからこのアイデアを聞いた時は冗談だと思ったものの、実際に非常に効果的なパフォーマンスになったと語っており、このセッションがツアーのハイライトの一つであったことを物語っています。

各地での反響

本作のリリースに対する反響は、地域によって対照的な結果となりました。バンドの母国であるイギリスでは、全英アルバムチャートで最高51位に留まり、チャートインも4週で終了するなど、商業的な成功という点では控えめでした。しかし、ドイツでは『ジェネシス・ベスト・アルバム』（1999年）以来となるアルバムチャート1位を獲得し、41週にわたってチャートに留まるという大ヒットを記録しました。これは、ドイツにおけるジェネシスの根強い人気を改めて示す結果となりました。

このアルバムは、久々に集結したジェネシスが、そのキャリアを通じて生み出してきた多様な楽曲を高い演奏力で披露した、再結成ツアーの貴重な記録と言えるでしょう。往年のファンにとっては懐かしさと共に新たな感動を、そして新たな世代のリスナーにとってはジェネシスの奥深い世界を知る入り口となる作品です。

参加ミュージシャン

フィル・コリンズ – ボーカル、ドラムス
マイク・ラザフォード – ギター、ベース、バッキング・ボーカル
トニー・バンクス – キーボード、バッキング・ボーカル

アディショナル・ミュージシャン

ダリル・ステューマー – ギター、ベース、バッキング・ボーカル
* チェスター・トンプソン – ドラムス

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