ラクイラ地震

ラクイラ地震（2009年）の詳細解説

2009年1月から4月にかけて、イタリア中部アブルッツォ州ラクイラ県で発生した地震は、群発地震の活動を経て、4月6日3時32分（中央ヨーロッパ夏時間）にマグニチュード6.3の本震が発生しました。この地震は「アブルッツォ・ラーツィオ地震」とも呼ばれ、イタリア国内で大きな被害をもたらしました。

地震の経過

地震活動は2008年12月14日に始まったと考えられており、2009年1月にはマグニチュード3以下の地震が観測されました。その後、4月6日の本震に至るまで、断続的に地震が続きました。

2008年12月14日: マグニチュード1.8の地震が発生。
2009年1月16日: マグニチュード3以下の地震が発生。
2009年3月17日: スルモーナ付近でマグニチュード3.7の地震が発生。
2009年3月29日: スルモーナ付近でマグニチュード3.9の地震が発生。
2009年4月6日: マグニチュード6.3の本震が発生。

この地震は、数ヶ月にわたる群発地震活動の後に発生したもので、本震後も多数の余震が観測されています。4月6日の本震から48時間以内に256回の余震があり、4月7日には150回以上の余震が発生、そのうちマグニチュード3.0以上の余震は56回を数えました。

4月6日の大地震

本震は、イタリア国立地球物理学火山学研究所(INGV)によると、マグニチュード5.8（モーメントマグニチュード6.3）と測定され、震源の深さは約1.2kmと非常に浅い直下型地震でした。この浅い震源が被害を拡大させた要因の一つと考えられています。地震のエネルギーは、阪神淡路大震災の約8分の1程度でした。

ポツダムのGFZ研究所によると、地震のマグニチュードは6.2とされています。地震の揺れはイタリア全土で感知され、アヴェッツァーノとスルモーナではパニックを引き起こしました。4時37分にはマグニチュード5.1の余震が発生し、被害がさらに拡大しました。

地震の原因

イタリアは、ユーラシアプレートとアフリカプレートの境界に位置しており、地震活動が活発な地域です。特に、アペニン山脈沿いの地域では地震が頻発しており、過去にも多くの地震が発生しています。

この地域は、中生代以降の地殻変動により複雑な地質構造をしており、単純なプレートの沈み込みだけでは説明できない要因も絡み合っています。かつては圧縮力によってアペニン山脈が形成されましたが、現在の地震活動は、ティレニア海の拡大運動による引っ張り力が原因となっていると考えられています。

観測された断層の向き（北西-南東）と、断層の移動方向（北東-南西の引張力）は、この説を支持しています。これは、過去の逆断層が現在の正断層として活動していることを示唆しています。

被害状況

アブルッツォ州を中心に甚大な被害が発生しました。ラクイラ中心部のサン・サルヴァトーレ病院では入院施設の90%が使用不能となり、患者は避難テントや他の病院へ移送されました。屋外駐車場が臨時の手術室となり、多数の医師や看護師が治療にあたりました。

ラクイラ市街では、サンテ・アニメ教会のクーポラ、学生寮の一部、県庁舎、ホテルなどが倒壊し、多数の建物が利用不能となりました。1万から1万5千の建物に被害があったと推定されています。

ローマでも、地震による揺れが感知され、カラカラ浴場の一部が損壊、建物の亀裂などの被害が出ました。

支援活動

イタリア国内だけでなく、日本を含む各国から支援が寄せられました。

イタリア各地の歌手によるチャリティソング『Domani 21/04.2009』が制作された。
日本航空と全日空は、救援活動関係者を無償で輸送した。
神戸市やNPO団体が、被災地への救援金や見舞金を送付した。

地震予知に関する議論

地震発生前、グラン・サッソ国立研究所の技師が、ラドンガスの放射研究に基づき地震発生を予測しましたが、市民保護局長により煽動者として罰則を与えられました。

また、地震の危険度を判定する国の委員会は、地震発生前に大地震の兆候がないと判断し、その発表が被害拡大につながったとして、過失致死の疑いで捜査されました。

最終的に、委員会のメンバーは裁判で有罪判決を受けましたが、その後の控訴審で無罪となりました。

復興状況

地震により62,543人が家を失い、テントやホテル、民家に避難しました。その後、仮設住宅の建設が進み、被災者は徐々に仮設住宅に移りました。仮設住宅には、免震エコ住宅、仮設住宅モジュール、仮設校舎モジュールなどがありました。

また、コッレマッジョ大聖堂やサン・ベルナルディーノ大聖堂などの主要な建物も再建され、2017年12月までに完全に復旧しました。

備考

この地震は、イタリアの防災体制や地震予知の難しさなど、多くの課題を浮き彫りにしました。復興には長い年月が必要であり、被災者の生活再建は今も続いています。

参考資料

2009年4月6日 イタリア・ラクイラ地震被害調査速報（建築）
上西幸司、平成21年（2009年）4月6日イタリア中部（ラクイラ）地震被害調査速報 自然災害科学J.JSNDS 28-2167-183 (2009)
イタリアにおける大規模災害と公共政策―2009年アブルッツォ州震災の事例を中心に―
吉井博明、「イタリアの防災体制とボランティアの役割」『総合都市研究』 1997年 47号 p. 121-133, NAID 120006007560, ISSN 03863506, 東京都立大学都市研究センター
齋藤和樹, 前田潤、「イタリア中部地震における心理社会的支援」『日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要』 2010年 14号 p. 29-34, ISSN 2186-8263, NAID 110009544852

関連項目

地震の年表#ヨーロッパ
地震予知
第35回主要国首脳会議
イタリア中部地震 (曖昧さ回避)
イタリアの地震一覧
* イタリア市民保護局

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