ラバー・ブレッツ

ラバー・ブレッツ (Rubber Bullets)

「ラバー・ブレッツ」は、イギリス出身の革新的なバンド、10ccによって1973年に世に送り出されたシングル楽曲です。この曲は、10ccの主要メンバーであるグレアム・グールドマン、ケヴィン・ゴドレイ、そしてロル・クレームの3人の共同作業によって生まれました。

バンドにとって通算3枚目のシングルとしてリリースされた「ラバー・ブレッツ」は、発表されるや否や大きな注目を集め、イギリスの音楽チャートで驚異的な成功を収めます。特に、1973年6月23日付の全英シングルチャートでは見事に首位を獲得し、10ccにとって初の全英ナンバーワンシングルとなりました。この成功に続き、本作は同年に発表されたバンドの記念すべきデビューアルバム『10cc』にも収められ、アルバムの評価を高める一助となりました。

楽曲制作の背景とエピソード

楽曲の制作プロセスについて、メンバーのエリック・スチュワートは後に興味深いエピソードを明かしています。彼によると、「ラバー・ブレッツ」の基本的な構成やアイデアは、ケヴィン・ゴドレイとロル・クレームの二人が中心となって作り上げられました。そこに、グレアム・グールドマンが楽曲の中間部にあたる「ミドル・エイト」を加えることで、現在の完成形となりました。

歌詞の内容に関しては、複数の解釈を生むことになります。エリック・スチュワートが語るところによれば、歌詞の着想源は、1971年にアメリカで発生したアッティカ刑務所での暴動事件や、俳優ジェームズ・キャグニーが出演する古い時代の映画などから得られたものでした。しかし、この歌詞は発表当時、一部で別の意味に受け取られました。特に、BBCラジオのプロデューサーは、この曲が当時の北アイルランド紛争（いわゆる「ザ・トラブル」）を歌っていると解釈し、その政治的な示唆を懸念して放送禁止とする決定を下しました。意図せぬ政治的解釈によって、一時的にメディア露出が制限されるという事態に直面しましたが、楽曲の人気自体は揺るぎませんでした。

放送禁止という逆境にもかかわらず、「ラバー・ブレッツ」はテレビでは演奏される機会を得ました。1973年12月25日、クリスマスの日に放送されたBBC Oneの人気音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』では、この曲が演奏されました。当時の貴重なパフォーマンス映像は、後に2012年にリリースされた10ccのボックス・セット『Tenology』に収録されたDVDで見ることができます。

チャートでの成功と波及

全英シングルチャートでの1位獲得は、10ccのキャリアにおける大きな節目となりました。この成功はイギリス国内にとどまらず、アメリカ合衆国にも波及しました。10ccのシングルとしては初めて、アメリカの主要チャートであるBillboard Hot 100へのランクインを果たし、バンドの世界的な認知度を高めるきっかけとなりました。

他メディアでの使用

「ラバー・ブレッツ」は、その印象的なサウンドと歌詞によって、後年も様々なメディアで使用されています。例えば、1998年に公開された映画『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』のサウンドトラック盤に採用されており、映画の世界観を彩る楽曲として再び注目を集めました。

「ラバー・ブレッツ」は、10ccの初期における代表作の一つであり、彼らの音楽的な独創性と大衆的な成功が結びついた好例と言えるでしょう。その歌詞の多層性や、それを巡るエピソードも含め、今なお多くの音楽ファンに語り継がれる名曲です。

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