ラムセス5世

ラムセス5世

時代背景
ラムセス5世（紀元前1145年 - 紀元前1141年）は、古代エジプトの第20王朝における4代目のファラオです。彼の即位名は「ウセルマアトラー」です。父はラムセス4世で、母は王妃テントオペトです。

治世の特徴
ラムセス5世の治世には、アメン神官団の権力が著しく増大していました。この神官団は彼の祖父であるラムセス3世の時代から徐々にその影響力を強め、ついには国政への介入に至りました。神官団は多数の土地を神殿の所有として取り込み、ファイユーム地域に至るまで財政を掌握するようになりました。また、エレファンティネ島で発見されたトリノ1887パピルスには、神官たちが関与した金融スキャンダルの記録があり、神官団の権力の裏側に暗い側面があったことも示しています。

内乱と暴動
ラムセス5世の治世初年度には、大規模な暴動が発生し、職人たちは敵の襲撃を恐れ、王墓の建設を停止せざるを得なくなりました。数日後、リビア人の集団がエジプトに侵入し、テーベに大きな被害をもたらしました。このように、ラムセス5世の時代は内乱や外敵の脅威が続き、安定を欠いたものでした。

ラムセス5世の死と埋葬
ラムセス5世自身も健康を害し、在位わずか4年で亡くなりました。彼の死因には天然痘が考えられていますが、その病の特定は難しく、彼のミイラには痘痕が見られます。彼の埋葬は、王位を引き継いだ叔父のラムセス6世の治世2年目に行われたとされ、埋葬の遅れには、内戦の影響やラムセス6世による王位の簒奪、さらにはラムセス5世の軟禁が関与しているとの説があります。後者に関しては、ラムセス6世がラムセス5世のために作られた墓を自身のものとして利用したことが一因とされています。

ミイラとその特徴
ラムセス5世のミイラは、王墓KV35から発見されました。特筆すべきは、彼のミイラが非常に良い状態で保存されている点です。その身長は170センチ、死亡時の年齢は約36歳とされています。また、左手の指が欠けていることが確認されています。興味深いことに、彼に関する記述の中には「ミイラの睾丸は非常に大きい」との情報がありますが、男性器に関する具体的な記述は見られません。最近の遺伝子研究では、天然痘の起源が16世紀後半であることが示唆されており、ラムセス5世がかかった病が現在知られている天然痘と同一であるかどうかは疑問が残ります。

まとめ
ラムセス5世の治世は、神官団の力が国家に深く関与する時代であっただけでなく、内乱と侵略の波に悩まされた困難な時期でもありました。彼の短い治世とその影響は、エジプトの歴史における重要な一ページを形成しています。

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