ラムセス9世

ラムセス9世について

ラムセス9世（Ramesses IX、在位：紀元前1126年 - 紀元前1108年）は、古代エジプトの第20王朝において第8代ファラオであり、彼の即位名はネフェルカラー・セテプエンラーです。ただし、即位前の本名はアメンヘルケプシェフ・カエムワセトと言われています。

家系と背景

ラムセス9世は、ラムセス3世の息子であるメンチュヘルケプシェフの子孫と考えられており、彼の母の称号は、メンチュヘルケプシェフが埋葬されたKV10の壁に刻まれています。このような系図上の特定は、古代エジプトのファラオたちが持っていた家系の重要性を示しています。

ラムセス3世の死後、彼の後を継いだラムセス4世からラムセス8世までの王たちは、いずれも短い治世しか持たず、王権は急速に衰退していました。しかし、ラムセス9世はその治世において一時的な安定をもたらし、国の統治を続けました。

治世の特徴

ラムセス9世の治世は、特に下エジプトにおける建築事業で知られています。中でも、ヘリオポリスの太陽神殿での事業が力を入れられました。ヘリオポリスは古王国時代から続く太陽崇拝の中心地であり、ラムセス9世は伝統的な信仰の復権を通じて、上エジプトで力を増していたアメン神官団の影響力に対抗しようとしていたと考えられています。また、西方のダクラ・オアシスやカナン地方のゲゼルでも、彼の治世に関する遺物が見つかっており、エジプトが周辺諸国に対して残した影響力が垣間見えます。ただし、アジアの領土は失われており、かつてのエジプトの属国であったシリアやパレスティナは、様々な民族によって乱されていた時代でした。

王墓盗掘の発覚

ラムセス9世の治世16年目頃、テーベ東岸の市長パセルが告発した結果、王家の谷で王墓群が盗掘されていることが明らかになりました。この告発は、競争相手である市長パウルアアを貶める意図があったとされ、宰相カエムワセトによる王墓の調査が行われました。その結果、多くの墓が荒らされていたことが判明し、美術品として埋葬されたラムセス6世の墓もその一つでした。この一連の盗掘事件は、「墓泥棒のパピルス」と呼ばれる文書によって記録されており、取り調べが行われた結果、パウルアアは潔白を証明されました。

埋葬と遺体の名声

ラムセス9世は、約18年間の在位期間を経て死去し、この期間はラムセス3世の31年、ラムセス11世の28年に次ぎ、第20王朝で三番目に長いものでした。彼の死後、ミイラは王家の谷にあるKV6に埋葬され、その後は他の王たちのミイラと共に王家のカシェ（DB320）に移されました。1881年に発見されたミイラは、後の時代のパネジェム2世の妻ネスコンスの棺に納められていたことが分かりました。専門家の鑑定によると、ラムセス9世はおそらく50歳頃に亡くなったとされています。

結論

ラムセス9世の治世は、短期的な安定をもたらし、建築事業の推進をはじめとした重要な活動が行われましたが、腐敗や盗掘の問題も浮き彫りにしました。彼の影響力は、その後のエジプトにおいても語り継がれています。

もう一度検索