ラムリー島

ラムリー島は、ミャンマーの領土に属する島で、ベンガル湾の北東沿岸部に位置しています。その広さはミャンマー国内で最も大きい島嶼部を形成しています。

歴史を遡ると、この島は太平洋戦争中の混乱期に、一時的に日本軍の占領下に置かれました。戦争末期の1945年1月、イギリス軍を中心とする連合国軍が島を奪還するために「マタドール作戦」を発動し上陸。これにより激しい戦闘が繰り広げられ、「ラムリー島の戦い」としてその名が歴史に残されています。

戦後、ラムリー島は独立を遂げたビルマ（現在のミャンマー連邦共和国）の領土となり、現代の行政区分ではラカイン州のチャウピュー郡に区分されています。島における主要な都市としては、北岸に位置するチャウピューと、南部内陸部のラムリーが挙げられます。特にチャウピューは重要な役割を担っており、港湾施設や空港が整備されているほか、ミャンマー海軍の軍港も設置されています。古くから島民の暮らしは漁業や農業といった第一次産業を中心に営まれてきました。

2008年頃の状況を見ると、ラムリー島は比較的静かで、インフラの整備は限定的でした。公用車を含めて島全体で自動車が数台しかない状況や、チャウピューのような中心地でさえ一日のうちごく限られた時間しか電力が供給されないといった様子は、当時の島の静寂を物語っています。しかし、この状況は21世紀に入ってから劇的に変化しています。

変化の契機となったのは、中華人民共和国が進める広範なエネルギー資源確保戦略です。その一環として、ラムリー島を起点とする大規模な開発プロジェクトが始動しました。島の沖合から採掘される天然ガスを中国内陸部へ輸送するため、全長およそ1,450キロメートルに及ぶ長大なガスパイプラインの建設が進められ、2008年頃にはその完成が間近となりました。さらに、アフリカや中東地域から中国が輸入する原油を島で受け入れ、内陸へ送るための石油パイプラインもガスラインと並行して建設されています。

この石油輸送を可能にするためには、大型の原油タンカーが安全に入港できる港湾施設が不可欠です。そのため、チャウピューにおいては、深い水深を持つ新たな港湾の建設が大規模に進められています。これらのパイプラインと港湾施設が一体となったエネルギー輸送インフラが整備されることで、中国は地政学的なリスクが高いとされるマラッカ海峡を経由することなく、エネルギー資源を安定的に確保できる新たな輸送ルートを確保することになります。

かつて静かな島であったラムリー島は、現代においては中国の国家戦略に根差したエネルギー輸送の要衝として、その重要性を高めています。大規模な開発は島の景観や人々の暮らしにも大きな変化をもたらしています。

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