ララバイズ・オブ・バードランド

『ララバイズ・オブ・バードランド』(Lullabies of Birdland)

『ララバイズ・オブ・バードランド』は、ジャズ界の伝説的な歌手、エラ・フィッツジェラルドが1955年にデッカ・レコードから発表したスタジオ・アルバムです。この作品の特筆すべき点は、通常の新規録音集ではなく、1940年代後半から1950年代前半にかけて主に78回転のSP盤シングルとしてリリースされていた音源から厳選された楽曲を収録したコンピレーション盤であるという点です。これにより、当時のシングル市場で人気を博した楽曲や、様々なセッションでの彼女の歌声を一挙に聴くことができ、デッカ・レコード在籍期におけるエラの音楽活動の一端を俯瞰できる重要な記録となっています。

アルバムには、ジャズのスタンダードとして広く親しまれているタイトル曲「ララバイ・オブ・バードランド」をはじめ、ブルース、スウィング、バップといった多彩なジャンルを歌いこなすエラの表現力を堪能できる全11曲が収められています。これらの楽曲は、それぞれ異なる時期に、様々なバンドやアレンジャーとの共演を通じて録音されたものです。

収録曲

本アルバムに収録されている全11曲は以下の通りです。オリジナル盤の構成に従い、サイド1とサイド2に分けて記載します。カッコ内は作曲者名を示します。

サイド 1

ララバイ・オブ・バードランド - "Lullaby of Birdland" (ジョージ・シアリング, ジョージ・デイヴィッド・ウェイス) – 2:51
ラフ・ライディン - "Rough Ridin'" (エラ・フィッツジェラルド, ハンク・ジョーンズ, ビル・テニソン) – 3:14
エンジェル・アイズ - "Angel Eyes" (アール・ブレント, マット・デニス) – 2:54
スムース・セイリング - "Smooth Sailing" (アーネット・コブ) – 3:06
オー、レディ・ビー・グッド - "Oh, Lady Be Good!" (ジョージ・ガーシュウィン, アイラ・ガーシュウィン) – 3:08
レイター - "Later" (タイニー・ブラッドショウ, ヘンリー・グローヴァー) – 2:32

サイド 2

エラ・ハムズ・ザ・ブルース - "Ella Hums the Blues"（映画『Pete Kelly's Blues』より） (エラ・フィッツジェラルド) – 5:13
ハウ・ハイ・ザ・ムーン - "How High the Moon" (ナンシー・ハミルトン, モーガン・ルイス) – 3:15
ベイズン・ストリート・ブルース - "Basin Street Blues" (スペンサー・ウィリアムズ) – 3:07
エアメイル・スペシャル - "Air Mail Special" (チャーリー・クリスチャン, ベニー・グッドマン, ジミー・マンディ) – 3:02
フライング・ホーム - "Flying Home" (ベニー・グッドマン, ライオネル・ハンプトン, シド・ロビン) – 2:27

参加ミュージシャン

このアルバムに収録された各トラックは、複数の録音時期にわたるため、エラ・フィッツジェラルド以外にも様々なミュージシャンやオーケストラが参加しています。以下に主要な参加ミュージシャンおよび彼らが演奏したトラック、録音年をまとめます。

エラ・フィッツジェラルド - ボーカル (全曲)
サイ・オリヴァーと彼の楽団 - トラック 1, 3, 6, 9 (1949年, 1952年, 1954年録音)
レイ・ブラウンと彼のトリオ (プラス、ビル・ドジェット（オルガン）) - トラック 2, 10 (1952年録音)
ハンク・ジョーンズと彼のカルテット (プラス、ビル・ドジェット（オルガン）) - トラック 4 (1951年録音)
ボブ・ハガートと彼の楽団 - トラック 5 (1947年録音)
ドン・アブニー（ピアノ）、ジョー・モンドラゴン（ベース）、ラリー・バンカー（ドラムス） - トラック 7 (1955年録音)
不詳の楽団 (参加者としてアイドリース・シュリーマン（トランペット、レナード・グラハム名義）とレイ・ブラウン（ベース）を確認) - トラック 8 (1947年録音)
* ヴィック・シェーンと彼の楽団 - トラック 11 (1945年録音)

『ララバイズ・オブ・バードランド』は、このようにエラ・フィッツジェラルドのデッカ時代の多様な活動を凝縮したコンピレーション・アルバムとして、その後のキャリアへとつながる重要な時期の彼女の歌声を知る上で価値のある作品となっています。SP盤時代のジャズ・ボーカルの雰囲気を伝える貴重な音源集です。

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