ララージ

ララージ

アメリカ合衆国の音楽家、ララージ（1943年生まれ）は、電子楽器化されたツィターやピアノ、ムビラといった多様な楽器を操るマルチインストゥルメンタリストです。本名エドワード・ラリー・ゴードンとしてフィラデルフィアに生を受けた彼は、その静謐で瞑想的なサウンドで知られ、現代アンビエントミュージックの分野において独自の地位を確立しています。

幼少期をニュージャージーで過ごした彼は、この頃からヴァイオリン、ピアノ、トロンボーン、さらには歌唱といった様々な音楽の基礎を習得しました。高等教育はワシントンD.C.にある歴史ある黒人大学、ハワード大学に進み、作曲とピアノを専門的に学びます。音楽の道を究めた後、一度はニューヨークへと移り、スタンドアップ・コメディアンや俳優として、表現者としての別の道を模索した時期もありました。

しかし、1970年代初頭からは、東洋の神秘主義思想に深く傾倒するようになります。この探求は、彼の人生だけでなく、音楽に対するアプローチにも大きな変革をもたらしました。ちょうどこの頃、彼は地元の質屋で一台のツィターと出会います。この楽器に魅了されたララージは、それを電子楽器へと改造し、ピアノなど他の楽器と組み合わせて音響的な実験を開始しました。この独自の楽器を使った音楽作りは、徐々に彼の核となる表現方法となっていきます。

試行錯誤を重ねた結果、1978年頃には、その演奏技術と独自のスタイルを確立し、ニューヨークの公園や歩道での大道芸（バスキング）を始めました。特に、ワシントン・スクエア公園の北東の角がお気に入りの場所となり、彼はそこでしばしば目を閉じたまま、何時間も集中して即興演奏を行いました。その場に居合わせた人々は、彼の奏でる浮遊感のある、心地よい響きに耳を傾けました。

そして翌1979年、そのワシントン・スクエア公園での演奏中に、後のアンビエントミュージックの巨匠となる音楽家、ブライアン・イーノの目に留まるという運命的な出来事が起こります。イーノはララージの独特なサウンドに感銘を受け、自身のプロデュースするアンビエント・シリーズの第3作目として、彼の音楽をリリースすることを提案します。こうして誕生したアルバム『Ambient 3: Day of Radiance』は、ララージにとって自身名義で発表された初のアルバムであり、同時に彼の名を世界に知らしめる決定的な作品となりました。

この国際的な注目は、彼のキャリアを大きく飛躍させました。『Ambient 3: Day of Radiance』以前から、瞑想グループ向けにカセットテープで提供していたより長い演奏作品への需要が高まりました。また、音楽活動と並行して進めていた神秘主義の研究もさらに深まり、ニューヨーク州モンローにあるアナンダ・アシュラムの設立者であるスワミ・サッチダナンダや、シュリ・ブラマナンダ・サラスヴァティといった精神的な指導者たちとの交流を通じて、その内面的な探求をさらに発展させていきました。

音楽家としての活動に加え、ララージはユニークな取り組みも行っています。それは、笑いを取り入れた瞑想ワークショップの開催です。このワークショップは、参加者が笑うことを通じて心身をリラックスさせ、内面的な平安を得ることを目的としており、現在も世界中で開催され、多くの人々に影響を与えています。

ララージの音楽は、単なる聴覚体験を超え、リスナーを静けさや瞑想へと誘う力を持っています。初期の電子ツィターによるミニマルな響きから、近年はゴンクや他の楽器も取り入れつつ、その探求的な姿勢は変わることなく、多くの人々にとって癒しと安らぎの音を提供し続けています。

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