ラングレー (CV-1)

ラングレー(CV-1/AV-3): アメリカ海軍最初の航空母艦の波乱に満ちた生涯

アメリカ海軍が保有した最初の航空母艦、ラングレー(USS Langley, CV-1/AV-3)は、その誕生から終焉まで、数々のドラマを秘めた艦艇でした。元々はプロテウス級給炭艦ジュピター(USS Jupiter, AC-3)として1913年に就役。1920年から航空母艦への改造工事が開始され、1922年に再就役しました。艦名は、アメリカの天文学者であり航空学のパイオニアでもあるサミュエル・ラングレー博士に因んでいます。

給炭艦ジュピターから航空母艦ラングレーへ

ジュピターは1911年に起工され、カリフォルニア州で建造されました。就役後は太平洋艦隊に所属、太平洋沿岸やメキシコ湾などを航行。第一次世界大戦時には大西洋艦隊に転属し、物資輸送任務に従事しました。大戦後、空母への改装が決定。ノーフォーク海軍工廠で、上部構造物が撤去され、全長に渡る飛行甲板が設置されるなど、大規模な改造が行われました。完成した飛行甲板は、全長159.4m、幅19.8mの長方形で、船体からはみ出す構造となっていました。

ラングレーは、飛行甲板両側にカタパルトを装備。艦橋は飛行甲板と船体前方の隙間に設置され、給炭艦時代の艦橋を流用したという、独特の構造でした。格納庫は石炭槽を転用し、飛行機を格納庫から飛行甲板へ移動させるためのエレベーターも設置されました。搭載機数は約30機と推定されていますが、資料によっては48機という記述もあります。また、排煙処理方式や煙突の形状も竣工後何度も改良されました。機関はターボ電気推進機関、二軸推進で、最大速度は15.5ノットと、空母としてはやや物足りない性能でした。

1922年の再就役後、ラングレーは数々の試験飛行や訓練任務に従事しました。アメリカ海軍で初めて航空機が艦上発艦・着艦に成功したのもラングレーでした。また、カリブ海や大西洋岸での訓練、ワシントンD.C.でのデモンストレーションなどを通して、アメリカ海軍航空力の発展に大きく貢献しました。1925年にはカタパルトによる雷撃機の発射実験も行われています。

水上機母艦への転換と太平洋戦争

ワシントン海軍軍縮条約により、より大型で近代的なレキシントン級航空母艦が就役すると、ラングレーは空母としての役目を終えました。1936年、ラングレーはメア・アイランド海軍工廠でオーバーホールを受け、水上機母艦に改装されました。前部飛行甲板が撤去され、後部飛行甲板は水上機の搭載に使用されました。

太平洋戦争開戦時、ラングレーはフィリピンに停泊していました。開戦後は、アジア艦隊所属として、日本軍の侵攻を避け、オーストラリアへ脱出。その後、蘭印作戦に参加し、インドに輸送途中のP-40戦闘機をジャワ島に輸送する任務に就きました。

悲劇の最期

1942年2月27日、ジャワ島チラチャップ南方で、日本軍の一式陸上攻撃機隊の攻撃を受けました。複数の爆弾の直撃を受け、大破。搭載していたP-40戦闘機も炎上しました。航行不能となったラングレーは、随伴の駆逐艦により雷撃処分されました。乗員484名中、7名が戦死、5名が不明となりました。ラングレーの沈没は、日本軍による大本営発表では幾度か誤報が流されましたが、アメリカ海軍は4月3日にその沈没を発表しました。

ラングレーは、アメリカ海軍最初の航空母艦として、数々の功績を残しましたが、その短い生涯は、まさに波乱に満ちたものでした。その歴史は、アメリカ海軍航空力の黎明期を物語る貴重な証となっています。

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