ランドルフ・カーター

ランドルフ・カーター：クトゥルフ神話の主人公

ランドルフ・カーターは、H.P.ラヴクラフト（以下HPL）が創造したクトゥルフ神話における重要な架空の人物です。ボストン出身の資産家であり、神秘家、東洋学者、数学者としての顔も持ち合わせていました。HPL自身をモデルとした人物と見なされており、その生涯は現実と幻想、そして狂気と神秘が交錯する物語として描かれています。

初期の人生とドリームランド

1874年10月7日、マサチューセッツ州アーカムに生まれたカーターは、幼少期にアーカム近郊の洞窟「蛇の巣」で不可解な体験をします。この体験が、彼の人生における神秘への関心を決定づけることになります。30歳頃には、夢を通して異次元世界「ドリームランド」への旅を可能とする力「夢見人の力」を手に入れます。しかし、1904年、ドリームランドのカダスで古代の存在ナイアーラトテップと対峙し、その力を失うことになります。

第一次世界大戦と失踪

第一次世界大戦ではフランス外人部隊に所属し、戦闘に参加。1916年には重傷を負います。帰国後、親友ウォーランの失踪を経験し、自身の運命と世界の謎にますます心を奪われていきます。そして、1928年10月7日、54歳の誕生日、カーター自身も謎の失踪を遂げます。一族に伝わる「銀の鍵」を手に、アーカムの「蛇の巣」へと消え去ったのです。

HPL作品におけるカーター

カーターは、『ランドルフ・カーターの陳述』で初登場し、『名状しがたいもの』『銀の鍵』『未知なるカダスを夢に求めて』『銀の鍵の門を越えて』など、複数のHPL作品に登場します。これらの作品において、カーターは語り手として、あるいは主要な登場人物として物語を彩ります。特に、『ランドルフ・カーターの陳述』はHPL自身の夢を基に書かれた作品であり、カーターはHPL自身の分身とも解釈されています。

『ランドルフ・カーターの陳述』

この作品では、カーターの友人ウォーランが、インドから入手したアラビア語の魔術書の解読を機に、アーカムの地下墓地へと向かいます。ウォーランは単身で地下へと降りて行きますが、地下から聞こえてきた悲鳴を最後に、消息を絶ちます。カーターは電話でウォーランの様子を聞いていましたが、受話器から「ばかめ、ウォーランは死んだわ」という不気味な声が聞こえてきました。

『名状しがたいもの』

この作品では、カーターはジョウエル・マントンと共にアーカムの古い埋葬地で奇妙な怪物と遭遇します。その怪物は、2人を襲い、マントンは負傷を負います。この出来事が、彼らの世界観に衝撃を与えます。

『銀の鍵』

カーターの失踪を描いた作品。この作品で、カーターが「銀の鍵」を用いて姿を消す様子が描かれています。

『未知なるカダスを夢に求めて』

この作品は、HPLの死後に発表された作品で、時系列的にはカーターの若い頃の話です。ドリームランドで禁断の都市カダスを探求するカーターの姿が描かれています。カダスを発見したカーターですが、ナイアーラトテップの怒りを買い、夢見の力を奪われます。

『銀の鍵の門を越えて』とその後

カーター失踪後、彼の遺産相続をめぐって騒動が起こります。この作品では、カーターの友人や親族たちが登場し、彼の失踪の謎に迫ります。さらに、『幻影の王』では、カーターが宇宙的存在と出会い、異世界の支配を勧められる描写があります。その後も、他の作家によってカーターが登場する作品が書かれており、クトゥルフ神話における彼の存在は、現在もなお語り継がれています。

カーターを取り巻く人物たち

カーターの人生には、多くの関連人物が登場します。友人、親族、そして敵対者など、彼を取り巻く人々は、彼の物語をより複雑で奥深いものとしています。HPLの作品では、カーター家系図や来歴が設定されており、カーター家の歴史が物語に深みを与えています。

カーターの遺産と謎

カーターの失踪は、多くの謎を残したまま終わります。彼がどこへ行ったのか、彼の目的は何だったのか、そして彼が持っていた「銀の鍵」の真の力とは何か。これらの謎は、読者に多くの想像力を掻き立て、クトゥルフ神話の世界への深入りを促します。ランドルフ・カーターは、HPLが生み出した最も魅力的で不可解なキャラクターの一人であり、これからも多くの読者を引きつけてやまないでしょう。

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