ラン・フォー・カヴァー

ゲイリー・ムーアの7thアルバム『ラン・フォー・カヴァー』は、豪華なゲスト陣を迎えたことで話題を呼んだ作品です。元シン・リジィのフィル・ライノット、元ディープ・パープルのグレン・ヒューズという大物ミュージシャンが参加し、楽曲に彩りを添えています。

制作の背景

本作では、グレン・ヒューズが4曲でリード・ボーカルを務めていますが、過度の飲酒や不摂生な生活が原因で、ゲイリー・ムーアのバンドを解雇されるという経緯がありました。しかし、1999年にはムーアとヒューズの関係は修復され、わだかまりは解消されました。

「ミリタリー・マン」は、フィル・ライノットがグランド・スラム時代に制作した楽曲で、ゲイリー・ムーアのアルバムで日の目を見ることになりました。また、「アウト・イン・ザ・フィールズ」では、ライノットとムーアがリード・ボーカルを分け合い、2人の個性が光る楽曲に仕上がっています。ライノットは、本作リリース後のイギリス・ツアーにもゲスト参加しましたが、体調不良のため、予定されていた日本公演への参加は実現しませんでした。

「エンプティ・ルーム」は、前作『ヴィクティムズ・オブ・ザ・フューチャー』からのシングル・ヒット曲を再録音したもので、12インチ・シングルには7分半のロング・バージョンが収録されています。

リリースと収録曲

LP版は9曲入りでしたが、同時期に発売されたCD版には「アウト・オブ・マイ・システム」が追加され、10曲入りとなりました。2002年のリマスターCDでは、さらに3曲のボーナス・トラックが追加されています。

収録曲は以下の通りです。

1. ラン・フォー・カヴァー
2. リーチ・フォー・ザ・スカイ
3. ミリタリー・マン
4. エンプティ・ルーム
5. アウト・オブ・マイ・システム (CDのみ収録)
6. アウト・イン・ザ・フィールズ
7. ナッシング・トゥ・ルーズ
8. ワンス・イン・ア・ライフタイム
9. オール・メスド・アップ
10. リッスン・トゥ・ユア・ハートビート

反響と評価

アルバムに先駆けてリリースされたシングル「アウト・イン・ザ・フィールズ」は、ゲイリー・ムーア&フィル・ライノット名義で発表され、全英シングルチャートで5位という大ヒットを記録しました。続く「エンプティ・ルーム」も全英23位に達し、アルバムへの期待を高めました。

アルバムは全英アルバムチャートで最高12位を記録し、自身2度目のトップ20入りを果たしました。また、スウェーデンやノルウェーのアルバム・チャートでも上位にランクインするなど、ヨーロッパを中心に高い人気を博しました。

オールミュージックのレビューでは、5点満点中4点を獲得し、「ゲイリー・ムーアの前2作のヘヴィメタル的な要素を保持しつつ、洗練されたポップ色を取り入れている」と評価されています。また、「名バラード"Empty Rooms"の良質なリメイク」も高く評価されています。

参加ミュージシャン

ゲイリー・ムーア - ギター、リード・ボーカル、バッキング・ボーカル
グレン・ヒューズ - リード・ボーカル、ベース
フィル・ライノット - リード・ボーカル、バッキング・ボーカル、ベース
アンディ・リチャーズ - キーボード
ドン・エイリー - キーボード
ニール・カーター - キーボード、バッキング・ボーカル
ボブ・デイズリー - ベース
ゲイリー・ファーガソン - ドラムス
チャーリー・モーガン - ドラムス、シモンズ・ドラムス
ジェイムス・"ジンボ"・バートン - サンプル・ドラムス
* ポール・トンプソン - ドラムス

『ラン・フォー・カヴァー』は、ゲイリー・ムーアの音楽キャリアにおける重要な作品であり、彼の多様な音楽性を堪能できる一枚です。豪華なゲスト陣とのコラボレーションが生み出す、エネルギッシュでメロディアスなサウンドをぜひお楽しみください。

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