ラーオ族

ラーオ族：ラオスとタイを繋ぐ民族の歴史と文化

ラーオ族は、ラオス語を母語とするタイ族の一派です。ラオスとタイ東北部（イーサーン地方）を中心に居住し、ラオス国内では人口の過半数を占める主要民族として、タイではイーサーン地方の住民として大きな存在感を示しています。ラオスの国名にもその名が用いられていますが、これはラオス国籍を持つ全ての人々を指す広い意味での呼称であり、この記事ではラーオ族固有の文化や歴史に焦点を当てて解説します。タイに居住するラーオ族、特に捕虜として移住した人々の詳細については、イーサーン人の歴史に詳しい資料を参照することをお勧めします。また、北タイに進出したラーオ族のグループについては、タイ・ユワン族に関する研究が参考になります。

歴史：古代からの移動と王朝の興亡

ラーオ族は、タイ族の一派として、6世紀頃にタイ北部チエンセーン周辺に到達し、11世紀にはパヤオへと進出したとされています。その後、一部のグループがパヤオを離れ、メコン川東岸、現在のラオスへと移住しました。これが現在のラーオ族の起源と考えられています。ナーン王統史には、プーカー王国の王子がメコン川東岸に移住し、ラーンサーン王朝を築いたという記述もありますが、その真偽は定かではありません。

ラーンサーン王朝はクメール王朝を退け、ラオス地域に勢力を築きました。しかし、内部抗争や周辺諸国の侵攻により衰退していきました。その後、ラーオ族はアユタヤ王朝やチャクリー王朝（いずれもシャム人、小タイ族が支配）の支配下に置かれますが、同系民族と見なされながらも「田舎者」と蔑視されることもありました。この差別意識が、ラーオ族のナショナリズムの芽生えとなりました。仏領インドシナ時代には、フランスによる文化的な抑圧が、さらにラーオ族のナショナリズムを高める要因となりました。

分布：ラオス国内および周辺地域

ラオス政府は、ラーオ族を「低地ラーオ族」「丘陵地ラーオ族」「高地ラーオ族」の3つに分類していますが、これは居住地に基づいたものであり、言語や文化的な違いを反映した分類ではありません。この分類は、少数民族の同化政策の一環として行われているとされています。1995年の国勢調査によると、ラオス国内には約240万人のラーオ族が居住しており、国民の52%を占めていました（タイ・カダイ語族全体では約300万人）。一方、タイ国内には、タイ国民の約3分の1に相当するラーオ族（イーサーン人）が暮らしています。イーサーン人はタイ東北部に多く居住していますが、バンコクなどへの出稼ぎも多いことから、国内に広く分散して生活しています。彼らは、小タイ族との同化傾向も見られます。カンボジアにもラーオ族の居住地があり、ベトナム戦争やラオス内戦を逃れてベトナムへ移住したラーオ族も約50万人いると推定されています。

言語：ラオス語とラーオ文字

ラーオ族の母語はラーオ語（ラオス語）です。ラーオ文字を用いて表記されます。

文化：質素な食文化と独自の音楽

ラーオ族の伝統的な食文化は、地理的条件の影響を受けて質素なものです。コーラート台地のはずれに位置し、雨量が少なく、土壌の水はけが悪いことから、餅米を主食とし、魚やソムタムなどのシンプルな料理が一般的でした。近年はフランス料理の影響も受け、フランスパンなども食されています。宗教は上座部仏教ですが、小タイ族と比較して精霊信仰（ピー信仰）の影響が強いとされています。伝統音楽には、モーラムと呼ばれる独特の音楽があり、現在ではバンコクで制作されたイーサーン人によるモーラムが主流となっています。

関連項目

* イーサーン

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