ラーマ3世

ラーマ3世（รัชกาลที่ ๓）は、タイのチャクリー王朝における第3代国王として、1824年から1851年までシャム王国を統治しました。国王はナンクラオ（นั่งเกล้า）またはチェーサダーボーディン（เจษฎาบดินทร์）という別名でも広く知られており、現代のタイでは50バーツ紙幣の裏面にその肖像が使用されています。なお、同時代の中国清朝からは鄭福、ベトナムからは沙多鋪丁という名で認識されていました。

生涯

王子時代

ラーマ3世は、ラーマ1世の治世下にあったバンコク王宮で、同国王にとって初孫として生を受けました。幼名はタップといい、父は後にラーマ2世となるイッサラスントーン王子、母は後にクロムソムデットプラ・スラーライの称号を得るリアムでした。

幼い頃から、祖父であるラーマ1世や父イッサラスントーン王子に連れられて戦場に赴き、そこで実践的な帝王学や統治の知恵を学んだと考えられています。ラーマ1世の崩御後、父イッサラスントーンがラーマ2世として即位した際、タークシン大王の息子とされるカサットラーヌチット王子が反乱を起こしました。この反乱鎮圧の任務を託されたタップ王子は見事にこれを成功させ、その功績によってクロムムアン・チェーサダーボーディンという官位および称号を授けられました。

即位

1824年、ラーマ2世が重い病の末に37歳で崩御しました。慣例に基づく王位継承権は、当時仏門に入り学問に没頭していたモンクット王子（後のラーマ4世）にありました。しかし、タップ王子は既に多くの政府機関での実務経験を積み、ラーマ2世の晩年には事実上、国王の公務を代行するほどの実績がありました。このため、王宮内では王位継承に関して意見が分かれましたが、最終的には投票によってタップ王子が新たな国王に選出され、ラーマ3世として即位することとなりました。

即位に際し、ラーマ3世は、それまでラーマ1世を「最初の治世様」、ラーマ2世を「中期の治世様」と通称していた慣習を改め、それぞれに「プッタヨートファーチュラーローク」、「プッタルートラーナパーライ」という正式な諡号を贈りました。これは、自身が「最後の治世様」と呼ばれることによる不吉な予感を避けるためであったと伝えられています。当時の信仰では、このような通称に厄が伴うと考えられていたのです。即位にあたっては、非常に長く荘厳な儀式名が奉呈されました。

即位後、清朝はラーマ3世をラーマ2世の正当な後継者として認めましたが、タークシン大王の血筋を引く者であると誤解しており、送られてきた親書では鄭福という名で呼ばれていました。

治世

ラーマ3世の治世は27年間に及び、その間、シャム王国は特に清朝との貿易で莫大な利益を上げました。国王はこの利益を赤い布袋に入れて自身の寝所に保管し、これを「赤袋の金」と呼びました。これは、もし将来外国からの攻撃によって領土を失うような事態が起きた際に、その資金で領土を買い戻すためであるとして、非常に大切にされたと言われています。

経済的な基盤を強化する一方で、ラーマ3世は軍備の増強にも力を注ぎました。当時、隣国ビルマのコンバウン王朝がイギリスの侵攻によって弱体化していたため、シャムは比較的容易に兵力を周辺地域に展開することができました。これにより、ベトナム勢力の国境侵入を効果的に阻止するとともに、カンボジア西部への侵攻を進め、その領土を支配下に置くことに成功しました。また、ラオスのヴィエンチャン王国でアヌウォン王がシャムに対して反乱を起こした際には、これを討伐し、地域の安定を図りました。

人物と業績

ラーマ3世は、その深い信心でも知られる国王でした。仏日には、功徳を積むために貧困層の人々に食料を施したり、捕獲された動物を解放したりするなど、タイ仏教における慈善活動を積極的に行いました。また、国内に50以上の寺院を建立または修繕し、仏教の保護に努めました。

父ラーマ2世から受け継いだ詩才を持ち、文人としても有名でした。父王らとともに、タイ文学の古典とされる叙事詩『クン・チャーン＝クン・ペーン』の創作にも関わっています。ラーマ3世の治世は、大きな戦乱が比較的少なかったため、国の安定を背景にインフラ整備にも精力的に取り組みました。道路や運河の建設・修繕などが進められ、国家の基盤が強化されました。これらの功績から、ラーマ3世までの治世は「チャクリー王朝の建設期」として位置づけられています。

家族

ラーマ3世は生涯で総勢51人の子孫を残しました。その中でも、男子として生まれ、王族の身分を保持した子孫たちが創設した氏族が13家あります。以下にその氏族名と、始祖となったラーマ3世の息子たちの名を記します。

シリウォン家（始祖：マータヤーピタック王子）
コーメーン家（始祖：チェーターティベーン王子）
カネーチョーン家（始祖：アマレーンタラボーディン王子）
ゴーンロット家（始祖：ゴーンロット王子）
ラダーワン家（始祖：プーミンタラパックディ王子）
チュムサーイ家（始祖：ラーチャシーハウィックロム王子）
ピヤーコーン家（始祖：ピアック王子）
ウライポン家（始祖：アドゥンラヤラックサナソムバット王子）
オーラノップ家（始祖：ウドムラッタナラーシー王子）
ラムヨーン家（始祖：ラムヨーン王子）
スバン家（始祖：プーワナイナルベーントラーティバーン王子）
シンハラー家（始祖：ボーディンタラパイサーンソーポップ王子）
* チョムプーヌット家（始祖：チャルーンポンプーンサワット王子）

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