リオ・リコ

リオ・リコの歴史と地域の変遷

リオ・リコ（Rio Rico）は、メキシコのタマウリパス州にある小さな村で、リオグランデ川の南岸に位置しています。1970年にアメリカからメキシコへと正式に割譲されたこの場所は、歴史的に複雑な背景を持ちます。2010年の国勢調査によれば、リオ・リコの人口は267人と、わずかな住民が暮らしています。

1848年の国境定義

1848年、アメリカとメキシコの間で締結されたグアダルーペ・イダルゴ条約により、リオグランデ川が米墨国境として設定されました。この地域は、川が多くの蛇行を描く特異な地形のため、土地の境界が非常に複雑で、テキサス州のヒダルゴ郡に属していた「ホーコン・トラクト（Horcon Tract）」と呼ばれる地区に含まれていました。

流路変更と孤立した土地

1906年、リオグランデ川の流路が洪水によって変更され、新たな流れがそれまでの土地を孤立地域へと導くことになります。当時、この場所に灌漑設備を持っていたアメリカ企業が川の流れをショートカットした結果、165ヘクタールの土地がメキシコ側へと孤立し、その後この地域は人々から忘れ去られました。国際国境水利委員会が、この川の流れの変更による領土の割譲について提訴するも、罰金と標識設置の命令が出されたものの、実際に設置された形跡はありません。

禁酒法による栄誉

1929年、アメリカ側とこの村を結ぶ吊り橋が完成すると、リオ・リコ北部には賑わう町が形成されます。禁酒法の影響で、娯楽施設や酒類が提供され、多くの人々が訪れるようになりました。悪名高いアル・カポネもこの町に出資し、訪れることが多かったとされています。この時期、ホーコン・トラクトは誰からも忘れられていました。

没落と再建

しかし、1933年に禁酒法が廃止されると、町の賑わいは徐々に失われ、1941年の大洪水によって町の重要なインフラも流失してしまいます。この結果、メキシコ当局はリオ・リコを少し南に再建しましたが、かつての賑わいはすっかり失われ、多くのアメリカ人にとってこの村は再び忘れ去られる存在となってしまいました。

再発見と新たな運命

1967年、アリゾナ州立大学の地理学者ジェームズ・ヒルによるホーコン・トラクトの発見は、両国政府にとって驚くべきものでした。アメリカの領土として存在しながら、一切の管理権はメキシコに委ねられていたのです。1970年、米墨国境に関する条約により、リオ・リコは正式にメキシコに割譲され、1977年に完全に実施されました。その以前、この地域で出生した人々がアメリカ市民権を求める裁判を起こし、最終的には約1000人が市民権を獲得しました。

リオ・リコは、流転する歴史を持つ村であり、過去の記憶を辿りながら未来を歩んでいます。

もう一度検索