ポメリウム

ポメリウム (pomerium)

ポメリウムとは、古代ローマの中心部を定める境界線のことです。法的には、ポメリウムの内側のみが「ローマ」本体とされ、その周辺の土地は単なるローマの領土と区別されていました。

位置と拡張

伝承によれば、ロームルスがローマを建設した際の城壁があった場所を、セルウィウス・トゥッリウスがポメリウムとして定めたとされています。ただし、これはセルウィウス城壁とは異なる境界線でした。

紀元前80年、独裁官ルキウス・コルネリウス・スッラは、自身の権力を誇示するためにポメリウムを拡張しました。クラウディウス帝もポメリウムを示すために「シパス」と呼ばれる白い石を設置しましたが、その一部は本来の位置とは異なる場所で発見されています。タキトゥスの記録によれば、クラウディウス帝自身もポメリウムを拡張しています。

アウルス・ゲッリウスは、アウグストゥス、ネロ、トラヤヌスといった皇帝もポメリウムを拡張したと述べていますが、他の文献や考古学的な証拠は見つかっていません。

ポメリウムは、中国の紫禁城とは異なり、壁に囲まれていたわけではありません。シパスを目印とした法的・宗教的な境界線でした。ローマ中心部やローマの七丘がすべてポメリウムの内側に含まれていたわけではなく、パラティーノは内側でしたが、カンピドリオとアヴェンティーノは外側でした。フォルム・ロマヌムのクリア・オスティリアとコミティウムは、都市国家および帝国の政治の中心でしたが、ポメリウム内にありました。一方、ベローナの神殿はポメリウムの外に位置していました。

関連する制限事項

ポメリウムは、様々な制限事項と結びついていました。

インペリウム（軍事指揮権）を持つ政務官の権限は、ポメリウム内では制限されました。市民を打ち据えることはできても、殺すことは許されませんでした。その象徴として、政務官を警護するリクトルが持つファスケスの斧の部分は、ポメリウム内では取り外されました。ただし、独裁官のリクトルだけは、ポメリウム内でも斧付きのファスケスを所持することができました。
宗教的・政治的な理由から、神権による王はポメリウム内に入ることを禁じられていました。そのため、外国の王がローマを訪問する際には不便が生じました。例えば、クレオパトラ7世はユリウス・カエサルに会うためにローマを訪問した際、ポメリウム内に入ることを許されませんでした。
ポメリウム内への埋葬は禁止されていました。ユリウス・カエサルはポメリウム内に墓を設ける権利を事前に得ていましたが、実際には遺骨は先祖代々の墓に納められました。しかし、トラヤヌス帝が117年に亡くなった際には、ポメリウム内にあるトラヤヌスの記念柱の下に埋葬されました。
地方の政務官権限保持者や将軍は、ポメリウム内に入ることを禁じられており、境界を越えた瞬間にインペリウムを剥奪されました。そのため、戦勝帰国した将軍は、凱旋式が開催されるまで、ポメリウムの外で兵士と共に待機する必要がありました。共和政時代には、兵士もポメリウムに入った時点で兵士としての身分を失い、一般市民として扱われました。彼らは市民の服装に着替え、凱旋式に参加しました。ケントゥリア民会は、ポメリウム外のカンプス・マルティウスで会合を開く必要がありました。
ユリウス・カエサルが暗殺されたポンペイウス劇場も、ポメリウムの外にありました。クリア・オスティリア（元老院議場）に入ることが禁じられている元老院議員を含め、元老院の会議はポンペイウス劇場内の元老院の部屋で行われました。
宗教的・伝統的な理由から、ポメリウム内では武器の所持も禁止されていました。プラエトルの護衛は、一般的なトガのみを着用することが許されており、これは cohors togata と呼ばれました。ただし、短剣を隠し持つことは可能でした。ユリウス・カエサルはポメリウム外で殺害されたため、暗殺の首謀者らは武器をポメリウム内に持ち込んだ罪を問われることはありませんでした。

ポメリウムは、古代ローマの社会、政治、宗教における様々な側面を理解するための重要な概念です。

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