リジェ・JS41

リジェ・JS41：ベネトンとの影と光、そしてブリヂストンの未来を担ったマシン

1995年のF1世界選手権を舞台に、リジェチームが送り出したJS41は、数々のドラマを生み出した一台でした。フランク・ダーニーが設計したこのマシンは、その開発から運用、そしてその後の人生まで、F1の歴史に独特な足跡を残しています。

ベネトンの影、無限ホンダの咆哮

JS41の開発には、ベネトンの影響が色濃く反映されていました。当時ベネトンチーム代表だったフラビオ・ブリアトーレがリジェを買収、トム・ウォーキンショーがチーム代表に就任するなど、両チームの連携は非常に緊密でした。この関係により、リジェが保有していた強力なルノーV10エンジンの権利がベネトンに譲渡され、JS41は前年までロータスが使用していた無限ホンダV10エンジンを搭載することになります。このエンジン獲得には、ミナルディとの訴訟沙汰もあったと伝えられています。

JS41のシャーシデザインは、丸みを帯びたハイノーズや特徴的なサイドポンツーン、ブーメラン型のリアウィングなど、ベネトンB195と類似点を指摘する声が多くありました。特に、搭載エンジンを除く多くのコンポーネントが共通点を持つことから、レギュレーションに抵触する「コピーマシン」ではないかとの議論を巻き起こしました。FIAは別シャーシであると結論づけましたが、両チーム間でのパーツ共有が暗黙の了解として行われていたという証言も残されています。シーズンが進むにつれて、両車の共通点は減少していきましたが、初期における密接な関係は、JS41の開発に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

ドライバー交代劇とシーズン成績

1995年シーズン、JS41のステアリングを握ったのはオリビエ・パニスと鈴木亜久里でした。しかし、シーズン途中で鈴木が帰国し、マーティン・ブランドルが代役を務めることとなります。このドライバー交代劇には、ウォーキンショーが無限ホンダとの契約締結に鈴木を起用しただけであり、自身の信頼するブランドルを優先したという背景があったと言われています。

シーズンを通して、JS41は数々のリタイヤを喫するものの、光る活躍も見せました。第9戦ドイツGPで鈴木が4年ぶりの入賞、第11戦ベルギーGPでブランドルが3位表彰台を獲得、そして最終戦オーストラリアGPではパニスが2位表彰台に輝きました。鈴木自身はJS41について、「F1で乗った中で最高クラスのマシンだった」と高く評価しています。

スペック

ブリヂストンテストカーとしての第二の人生

F1への参入を目指していたブリヂストンは、1997年にJS41を譲り受け、テストカーとして活用しました。赤と白を基調としたカラーリングに変更されたJS41は、鈴鹿サーキットなどで集中的なタイヤテストに使用され、ヨス・フェルスタッペン、鈴木亜久里、そして翌年からアロウズに移籍予定だったデイモン・ヒルがテストドライバーを務めました。ヒルはJS41の走行性能を高く評価しており、JS41はブリヂストンのF1参入において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

JS41は、ベネトンとの複雑な関係、個性的なデザイン、そしてブリヂストンへの貢献と、F1の歴史に様々なドラマを残した一台でした。その活躍は、今もなお多くのファンに語り継がれています。

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