リストロック

リストロック（小手挫）

リストロックは、格闘技や武道において、相手の手首関節を制圧して機能不全に陥らせたり、降参を促したりする関節技の一種です。日本古来の武術においては小手挫（こてくじき）や手首固め（てくびがため）とも称され、ブラジリアン柔術においてはモンジバカという名で知られています。合気道には、三教や小手返しなど、リストロックの原理を応用した技が多く存在します。

概要

リストロックは、体の末端にある手首というデリケートな関節を標的とするため、その応用や変化形が多岐にわたるのが特徴です。技の仕掛け方によって様々なバリエーションが存在し、状況に応じて使い分けることができます。

この技は、立っている状態（スタンド）でも、寝ている状態（グラウンド）でも効果的に使用することが可能です。特にグラウンドにおいては、相手の上からでも下からでも仕掛けることができ、その汎用性の高さを示しています。さらに、リストロックは単体で使用されるだけでなく、他の多様な関節技や抑え込み技と連携させたり、組み合わせて複合的な攻撃を仕掛けたりする場面も多く見られます。具体的には、V1アームロック、オモプラッタ、腕挫腋固、ハンマーロック、テレフォンアームロックといった技からリストロックへ移行したり、これらの技と同時に複合的に極めたりすることが可能です。

リストロックは、外見上は比較的動きが小さく、派手さに欠ける技かもしれません。しかし、正確に関節の可動域を超えて極められた際の痛みは非常に強く、相手に瞬時に大きな苦痛を与えることができます。一方、手首の関節は一度損傷すると回復に長い時間を要する傾向があるため、練習を行う際には相手への十分な配慮と、技の正しい理解に基づく安全な実施が不可欠となります。

実際の試合における顕著な使用例としては、2004年のK-1 PREMIUM Dynamite!!で行われたホイス・グレイシー対曙戦が挙げられます。この試合でホイスは、寝技の展開からオモプラッタを仕掛けた後、そこからリストロックへと移行する形で技を完成させ、曙から勝利を収めました。

各競技における禁止技化の経緯

多くの格闘技や武道において、リストロックは安全性や競技性の観点から、特定のルール下で禁止あるいは制限されることが多い技です。特に柔道におけるリストロックの扱いは、その歴史の中で複雑な変遷をたどってきました。明治期においては、複数の資料間でその取り扱いに関する記述に相違が見られます。

例えば、1899年に大日本武徳会が定めた柔術試合審判規程に関しては、『柔道大事典』や『最新スポーツ大辞典』では禁止されたと記されていますが、『柔道五十年』や『柔道必携審判の巻』、『史料明治武道史』といった資料では禁止されていなかったとする記述も存在し、資料によって見解が分かれています。

同様に、1900年に講道館が柔道審判規程を定めた際についても、『柔道五十年』、『柔道必携審判の巻』、『最新スポーツ大辞典』、『柔道大意』といった資料は禁止技になったとしていますが、『詳解柔道のルールと審判法』では1900年には禁止されておらず、1916年の規程改正によって禁止されたと記述されており、ここでも見解の不一致が見られます。しかしながら、少なくとも1924年（大正13年）4月までには、大日本武徳会においてもリストロックが禁止技とされていたことが、『大日本武徳会武道専門学校一覧』によって確認されています。

一方で、競技性の高いプロ柔道においては異なる扱いがなされた例もあります。1950年に日本で設立された国際柔道協会が開催したプロ柔道では、リストロックが解禁されていた時期が存在します。

現代の主要な寝技系格闘技であるブラジリアン柔術や柔術、サンボなどにおいても、リストロックには一定の制限が設けられています。ブラジリアン柔術の主要な国際連盟である国際ブラジリアン柔術連盟（IBJJF）のルールでは、若年層であるジュブナイル（18歳未満）以下のカテゴリーおよび白帯の選手に対してリストロックの使用が禁止されています。また、国際柔術連盟（JJIF）においても、U16（16歳未満）以下のカテゴリーで禁止されており、2022年からは白帯の選手に対しても禁止技と定められました。

サンボにおいては、スポーツサンボ、コンバットサンボのいずれのルールにおいても、合法的に関節を極める部位として手首は挙げられていません。これは事実上、リストロックがルール上で認められていないことを意味し、1986年発行の専門書籍『これがサンボだ!』においても手首の関節を極める行為は反則であると明記されています。

このように、リストロックはその効果の高さから多くの武道や格闘技で用いられてきた一方で、競技における安全性の確保や技術体系の整備といった観点から、時代やルールによってその扱いが大きく異なってきた歴史を持つ技であると言えます。

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