リゾートみのり

リゾートみのり

リゾートみのりは、かつて東日本旅客鉄道（JR東日本）が運行していた特別な観光列車です。主に宮城県の仙台駅と山形県の新庄駅の間を、東北本線と陸羽東線を経由して結んでいました。この列車は臨時快速列車として、沿線の豊かな自然や温泉、文化といった魅力を体験できる旅を提供しました。

この列車には専用に改造された気動車（ディーゼルカー）が使用され、その車両自体も「みのり」という愛称で親しまれていました。本稿では、この列車「リゾートみのり」と、それに用いられた車両「みのり」について詳しく解説します。

概要

「リゾートみのり」の登場は、2008年に実施された仙台・宮城デスティネーションキャンペーンを契機としています。JR東日本が各地で展開する観光列車のシリーズに連なる存在として企画され、同じくキハ48形を改造した「リゾートしらかみ」などのノウハウが生かされました。専用車両「みのり」は、主に「リゾートみのり」としての運用に就きましたが、観光需要のある時期には他の路線でジョイフルトレインとして運行されることも多く、多方面で活躍しました。特筆すべきは、同じキハ48形を種車とするトロッコ列車「びゅうコースター風っこ」と連結して運転された実績もあることです。

車両の老朽化に伴い、2020年3月には同年6月28日をもって営業運転を終了することが発表されました。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受け、同年4月13日からは感染拡大防止のため運休となり、予定されていた6月28日の最終運転も中止を余儀なくされました。その後、改めて運転日が検討され、2020年8月8日から10日にかけて、「ありがとうリゾートみのり号」と銘打たれた臨時列車として最後の運行が行われ、約12年間の歴史に幕を閉じました。現在、リゾートみのりが運行していた時間帯には、キハ110系による「快速湯けむり号」が後継列車として設定されています。

運行概況

「リゾートみのり」は、主に金曜日、土曜日、日曜日の週3日間を中心に、一日一往復運転されました。午前中に仙台を出発し、陸羽東線を経由して新庄へ向かう下り列車と、午後に新庄を発ち、仙台へ戻る上り列車が設定されていました。上り列車は、運行される季節（春季～秋季と冬季）によって時刻が約2時間異なるという特徴を持っていました。また、下り列車は、沿線の著名な温泉地である鳴子温泉駅で比較的長い時間停車するダイヤが組まれており、観光客への配慮が見られました。

使用される車両「みのり」は基本3両編成でしたが、需要や運用の都合によっては2両編成で運転されることもありました。

標準的な停車駅

仙台駅 - 松島駅 - 小牛田駅 - 古川駅 - 岩出山駅 - 有備館駅 - 川渡温泉駅 - 鳴子御殿湯駅 - 鳴子温泉駅 - 中山平温泉駅 - 赤倉温泉駅 - 最上駅 - 瀬見温泉駅 - 新庄駅

使用車両「みのり」

「リゾートみのり」の運行のために製造された専用車両は、キハ48形気動車3両を種車として、JR東日本郡山総合車両センターで改造されました。この車両には「みのり」という愛称が付けられました。愛称は一般公募によって決定されたもので、陸羽東線沿線の豊かな自然、特に「稲穂」が実る様子、温泉での「実り」あるひととき、そして紅葉に彩られる「実り」の秋をイメージし、さらに旅そのものが「実り多い」ものになるようにとの願いが込められています。

車両は3両編成で、仙台方の先頭車両が1号車でした。改造後も車両番号は変更されませんでした。全車両が回転式のリクライニングシートを備えた座席車として使用されました。座席はシートピッチが1,200 mmに拡大され、ゆったりと快適に過ごせる空間が提供されました。座席のモケットは、鳴子峡の美しい紅葉をイメージしたデザインでした。各座席には通常サイズのテーブルに加え、肘掛に収納できる小型のテーブルも備えられていました。1号車と3号車には車椅子をご利用のお客様向けのスペースも設置されていました。

特徴的な設備として、1号車と3号車の先頭部には展望ラウンジが設けられ、前面展望を楽しむことができました。また、2号車にはイベントスペースがあり、車内イベントなどに活用されました。外観は、1号車と3号車の前頭部形状が独特なデザインに変更されたほか、すべての車両で側窓が拡大され、ブロンズガラスの固定窓とすることで、沿線の眺望を最大限に楽しめるように工夫されていました。

車両の塗装デザインも特徴的です。ベースカラーは「紅葉」を表現した深みのある緋色と漆黒の組み合わせでした。先頭車両の前面には、仙台藩主・伊達政宗の兜をイメージしたアンティークゴールドの装飾が施されていました。また、先頭車から側面に流れるような形で、下部には「稲穂」を模したメタリックゴールドのラインが、そして出入り口部分にはメタリックシルバーが配され、沿線のテーマを随所に取り入れた美しいデザインでした。

編成と定員

1号車：キハ48 550 - 定員34名
2号車：キハ48 549 - 定員36名
3号車：キハ48 546 - 定員34名

全ての営業運転を終えた後、使用された車両「みのり」は2020年8月12日に郡山総合車両センターへ廃車のため回送され、同年9月1日付けで除籍がで正式に廃車となりました。

沿革

2008年5月：専用車両の愛称が「みのり」に決定。
2008年9月14日・15日：上野駅で車両「みのり」の展示会を実施。
2008年10月4日：仙台駅～新庄駅間での営業運転を開始。
2009年12月23日：利用者数が累計4万人に到達。
2010年3月13日：ダイヤ改正により、仙台～新庄間の運行日が拡大される。
2010年7月2日：利用者数が累計5万人に到達。
2013年8月24日：利用者数が累計10万人に到達。
2015年6月：臨時列車として、東北本線・石巻線経由で仙台～女川間を運行。
2016年3月19日：利用者数が累計15万人に到達。
2019年7月20日：利用者数が累計20万人に到達。
2020年4月13日：新型コロナウイルス感染症の影響により運休となる。
2020年8月8日～10日：臨時列車「ありがとうリゾートみのり号」として最後の営業運転を実施。
2020年9月1日：使用車両「みのり」が廃車される。

約12年間にわたり、陸羽東線の旅を彩った「リゾートみのり」は、沿線地域の活性化にも貢献し、多くの人々に愛された観光列車でした。その美しい車両と快適な設備は、多くの旅行者に豊かな「みのり」をもたらしたことでしょう。

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