リチャード・エリオット

リチャード・エリオットは、1960年1月16日に英国スコットランドのグラスゴーに生まれ、その後アメリカへと移住したサックスプレイヤーです。幼少期を過ごしたロサンゼルスで音楽への道を見出し、特にサックスに深い関心を寄せました。

サックスを本格的に学び始めたのは中学時代のこと。楽器の手ほどきを受け、めきめきと頭角を現した彼は、16歳という若さでプロの音楽家としての第一歩を踏み出します。彼のプロキャリア開始における重要な契機の一つが、1976年のアメリカ建国200周年を記念して企画された全国規模のバンドツアーへの参加でした。このツアーは全米各地を巡るだけでなく、日本公演も含むものであり、若きエリオットにとって貴重な経験となりました。

プロ活動を始めた初期には、ジャズ・ロックの要素を持つバンド、キティホークや、当時のフュージョンシーンで存在感を示していたイエロージャケッツといったグループでも演奏経験を積んでいます。そして1982年、彼はファンクミュージックを代表する伝説的なバンド、タワー・オブ・パワー（T.O.P.）に加入します。1988年までのおよそ6年間、彼はT.O.P.の強力なホーンセクションの一員として、バンドのファンキーなサウンドを支えました。

T.O.P.に在籍中であった1984年、リチャード・エリオットはソロアーティストとしてのデビューアルバムを発表し、自身の音楽表現を追求し始めます。1980年代後半にはフロリダ州のメキシコ湾岸沿いに生活の拠点を移し、ソロ活動にさらに力を注ぐようになります。

その後も、インティマ・レコードやマンハッタン・レコードといったレーベルからコンスタントにオリジナル作品をリリースし、サックス奏者としての評価を着実に確立していきました。1994年には、ジャズの名門として知られるブルーノート・レコードのコンテンポラリー部門へ移籍。ここではスムーズジャズ/フュージョンの分野で複数のアルバムを発表し、その地位を不動のものとしました。1997年にリリースされたアルバム『ジャンピン・オフ』は、ブルーノートと同じくキャピトル・レコード系列に属するメトロ・ブルーからの発表となりましたが、彼の創造性は途絶えることはありませんでした。2001年にはスムーズジャズ界で高い評価を得ているGRPレコードに移り、ここでも2枚のアルバムを制作しています。

彼のキャリアにおける特筆すべき出来事として、2004年にトランペッターのリック・ブラウンと共にアルチザン・ミュージック・グループを共同で設立したことが挙げられます。これは、自身を含むアーティストたちがより自由に音楽を発表できるプラットフォームとして機能しました。設立後、この自己レーベルから2005年にソロアルバム『メトロ・ブルー』を発表。さらに2007年には、共同設立者であるリック・ブラウンとのコラボレーションアルバム『R n R』をリリースするなど、活発な活動を展開しました。

しかし、アルチザン・ミュージック・グループは永続しませんでした。2008年10月、同レーベルはマック・アヴェニュー・レコードに買収され、アーティストリー・ミュージックと改称されました。レーベルの運営形態は変わりましたが、リチャード・エリオットの音楽活動が止まることはありませんでした。

近年も精力的な活動は続いており、スムーズジャズ界の主要アーティストたちとの共演も行っています。特に、デイヴ・コーズ、ジェラルド・アルブライト、ミンディ・エイベアらと共に制作した、2013年のデイヴ・コーズ・アンド・フレンズ名義のアルバム『Summer Horns』は大きな注目を集めました。また、2021年にはシャナキー・レコードからアルバム『Authentic Life』を、そして2024年には『Straight Up Down』をリリースするなど、現在に至るまで第一線で活躍し続けています。

ファンクバンドのホーンセクションからキャリアを始め、スムーズジャズ/フュージョンの分野で独自の地位を築き上げたリチャード・エリオット。トレードマークである縞模様のテナーサックスと共に、彼は常に進化し続けるサックスプレイヤーとして、世界中の音楽ファンを魅了し続けています。

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