リチャード・オブ・シュルーズベリー (ヨーク公)

ヨーク公兼ノーフォーク公リチャード：栄光と謎に包まれた生涯

1473年、イングランド王エドワード4世とエリザベス・ウッドヴィル夫妻の間に生まれたリチャードは、シュルーズベリーで幼少期を過ごしました。兄にエドワード5世、姉や弟妹たちに恵まれた彼は、幼いながらも王族としての特権を享受します。

1474年、わずか1歳でヨーク公の称号を授かりました。翌年にはガーター騎士団ナイトにも叙任され、王族としての地位を不動のものとしました。4歳の時、当時5歳だったノーフォーク女伯アン・ドゥ・モウブレーと結婚。彼女はノーフォーク公ジョン・モウブレーの娘であり、莫大な遺産を相続したことでリチャードの地位はさらに高まりました。1481年には、ノーフォーク公の称号も与えられています。

しかし、リチャードの運命は、父王エドワード4世の死によって大きく変わります。1483年、エドワード4世が崩御すると、兄のエドワードが即位、リチャードは当然推定相続人となりました。しかしこの状況は長く続きませんでした。

バース・アンド・ウェルズ司教ロバート・スティリントンが、エドワード4世とエリザベス・ウッドヴィルの結婚に法的瑕疵があったと主張したのです。それは、エドワード4世がエリザベス・ウッドヴィルと結婚する前に、エレノア・タルボットと秘密裏に結婚していたという内容でした。この主張は、エドワード4世とエリザベス・ウッドヴィルとの間に生まれた子供たち、つまりリチャードを含む兄弟の王位継承権を否定するものでした。

この主張を受け、エドワード4世の弟で摂政だったグロスター公リチャード（後のリチャード3世）は、エドワード4世とエリザベス・ウッドヴィルの結婚を無効と断定。その結果、エドワード5世とリチャードは1483年6月25日、王位継承権を剥奪されました。

リチャードは、即位したリチャード3世によってロンドン塔へ送られました。兄のエドワードと共に、「塔の中の王子たち」として知られる彼らのその後については、長い間謎に包まれていました。様々な憶測が飛び交い、中にはリチャード3世が兄弟を殺害したという説もありました。1674年にロンドン塔で見つかった2体の遺骨が、リチャードと兄のものだとされたこともありましたが、明確な証拠はありませんでした。これらの遺骨は1678年にウェストミンスター寺院に埋葬されました。

しかし、近年になってこの定説を覆す発見がありました。2020年、フィリッパ・ラングリーによる研究で、1487年時点でリチャードが生存していたことを示す文書が見つかったのです。この発見によって、リチャード3世が兄弟の殺害に関与していたという従来の説は、大きく揺らぎました。最新の研究によると、リチャード3世は逆に兄弟の助命に尽力していた可能性も示唆されているのです。これらの研究成果は、2023年に出版された『The Princes in the Tower: Solving History's Greatest Cold Case』に詳しく記されています。

ヨーク公兼ノーフォーク公リチャードの生涯は、王族としての華麗な始まりと、謎に満ちた最期を対比させる、ドラマチックなものでした。歴史の解釈は常に変化し、新たな発見によって、これまで知られていなかった真実が明らかになる可能性を秘めているのです。彼の生涯は、歴史研究の重要性と、過去の出来事に対する私たちの理解が、常に進化し続けることを示す好例と言えるでしょう。

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