リチャード・ケートン・ウッドヴィル

リチャード・ケートン・ウッドヴィル（Richard Caton Woodville, 1825年4月30日 - 1855年8月13日）は、19世紀のアメリカを代表する画家の一人です。彼は風俗画を得意とし、その短い生涯の大部分をヨーロッパで過ごしました。ボルチモアの名家に生まれたウッドヴィルは、当初医学を志しましたが、美術への強い関心から画家の道へと進みました。

生涯

ウッドヴィルはボルチモアで生まれ、メリーランド医学校で1年間医学を学びました。しかし、ボルチモアの美術コレクター、ギルモアの個人コレクションに触れたことがきっかけで、美術への情熱を燃やすようになりました。1845年には、ニューヨークのナショナル・アカデミー・オブ・デザインの展覧会に初めて作品を出展し、その才能を認められました。この作品はすぐにコレクターに買い取られ、ウッドヴィルは画家としての第一歩を踏み出しました。

20歳の時、ウッドヴィルは結婚したばかりの妻と共にドイツへ渡り、デュッセルドルフ美術アカデミーに入学します。彼はそこで1年間、フリードリッヒ・ヴィルヘルム・フォン・シャドーに師事し、その後も1851年までデュッセルドルフに滞在し、風俗画家のカール・フェルディナンド・ゾーンの指導を受けました。当時、デュッセルドルフはアメリカ人画家にとって人気の留学先であり、ウッドヴィルが滞在していた時期にも、エマヌエル・ロイツェ、ワージントン・ウィットレッジ、ジョン・ウェットン・エーニンガー、イーストマン・ジョンソンといった、後のアメリカ美術界を担う画家たちが学んでいました。

ウッドヴィルは、母国の美術連盟（American Art-Union）の後援を受けており、ヨーロッパで制作した作品はアメリカで展示され、機関誌で好意的な批評が掲載されました。彼の作品は買い上げられ、パトロンの会員に頒布されるなど、アメリカ国内でも高い評価を受けていました。例えば、1846年の作品「カードプレーヤーたち」はアメリカで展示され、大きな成功を収めました。また、1848年の作品「オイスターハウスの政治」は、ボルチモアのパトロンの依頼で描かれ、複製版画も制作されました。しかし、1850年には最初の妻と離婚するという私生活での転機も経験しています。

その後、ウッドヴィルはデュッセルドルフの著名な建築家アントン・シュニツラーの娘、アントワネットと再婚し、1851年からはパリ、ロンドンで生活しました。しかし、1855年、彼はロンドンでモルヒネの過剰摂取により、30歳という若さで急逝しました。

ウッドヴィルは短い生涯でしたが、その間に数々の優れた作品を残しました。彼の息子、リチャード・ケートン・ウッドヴィル Jr.もまた画家となり、第二次アフガン戦争などの戦闘場面を描いてイギリスで人気を博しました。親子二代にわたる画家として、その才能は後世に語り継がれています。

作品

ウッドヴィルの作品は、当時の人々の日常生活を生き生きと描いたものが多く、その描写の正確さと、物語性のある構図が特徴です。

「カードプレーヤーたち」：1846年に制作されたこの作品は、人々がカードゲームに興じる様子を描いたもので、その構図の巧みさと、人物の表情の描写が評価されています。
「オイスターハウスの政治」：1848年に描かれたこの作品は、当時のアメリカ社会における政治的な議論の様子を、オイスターハウスという場所を舞台に描いています。社会風刺的な視点と、生き生きとした人物描写が特徴です。

その他にも、「メキシコ戦役の行進」「戦争のニュース」「薪を割る女」など、彼の作品は多岐にわたります。これらの作品は、当時の人々の生活や文化、そして社会状況を垣間見ることができる貴重な資料となっています。

まとめ

リチャード・ケートン・ウッドヴィルは、短い生涯の中で数々の優れた作品を生み出した、アメリカ美術史において重要な画家の一人です。特に、彼の風俗画は、19世紀アメリカの社会と人々の生活を、生き生きと伝えています。デュッセルドルフでの修業経験は、彼の作品に大きな影響を与え、その作風を特徴づける要素となりました。若くして亡くなったものの、その作品は今日においても高く評価され、後世に大きな影響を与え続けています。

参考資料

* Elizabeth Johns and Paul Usherwood. "Woodville." Grove Art Online. Oxford Art Online. 17 Jul. 2011 .

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