リチャード・スワン・ルル

リチャード・スワン・ルル（Richard Swann Lull、1867年11月6日 - 1957年）は、20世紀のアメリカを代表する古生物学者の一人です。彼は特に、トリケラトプスに代表されるケラトプス類（角竜）の恐竜研究で知られており、その分類において重要な貢献をしました。

ルルは、イェール大学で長きにわたり教鞭を執り、研究活動を行いました。彼の専門分野はケラトプス類の恐竜であり、フリルの特徴に基づいて、世界で初めてケラトプス科を2つの亜科に分類しました。具体的には、セントロサウルス亜科とケラトプス亜科（現在ではカスモサウルス亜科と呼ばれることが多い）を提唱しました。この分類法は、当時の古生物学界に大きな影響を与えましたが、現代の研究によって一部が修正されています。

ルルの生い立ちを辿ると、彼はメリーランド州アナポリスで、海軍士官であるエドワード・フェルプス・ルルと、ヘンリー・バートン将軍の娘であるエリザベス・バートンの間に生まれました。ラトガーズ大学では動物学を専攻し、当初はアメリカ農務省で昆虫分類の研究を志していました。しかし、彼の興味は徐々に変化していきました。

1894年、マサチューセッツ州アマーストにある州立農業大学（現在のマサチューセッツ大学）で動物学の助教授に就任しました。アマースト大学は足跡化石の研究で有名であり、この地で足跡化石に触れたことが、彼の進路を昆虫学から古生物学へと大きく転換させるきっかけとなりました。その後、彼は古生物学の道を歩むことになります。

1899年には、アメリカ自然史博物館のブロントサウルスの骨格収集を支援し、同博物館がワイオミング州に持つボーン・キャビン・クオリーへの遠征にも参加しました。さらに、1902年には再びアメリカ自然史博物館のチームに加わり、モンタナ州での発掘調査を行いました。その後、コロンビア大学教授のヘンリー・フェアフィールド・オズボーンの下で研究を続けました。

1903年、ルルはアマーストでイェール大学の古脊椎動物学の助教授の学位を取得し、同時にピーボディ博物館で古脊椎動物学の学芸員に就任しました。彼はその後、50年間イェール大学に留まり、研究と教育に尽力しました。彼の長年の貢献は、イェール大学における古生物学研究の発展に大きく貢献しました。

ルルの研究は、恐竜の分類にとどまりませんでした。彼は、前ネオダーウィニズムの合成理論を立証しようと試みたことでも知られています。特に、オオツノシカの巨大な枝角に関する仮説は有名です。彼は、この枝角の巨大さは自然淘汰の結果ではなく、常にサイズが増加する方向に働く「鍵をかけていない遺伝駆動」によって説明できると主張しました。実際、枝角が小さいシカとより発達したシカが共存している事実は、ダーウィン的な自然淘汰では説明が難しいとされていました。これは、定向進化（進化がある一定の方向に進むという概念）の一例として捉えられましたが、現代科学ではどちらの考えも否定されています。

ルルの研究は、古生物学における様々な論争を巻き起こし、その後の研究に大きな影響を与えました。彼の業績は、古生物学の発展に貢献した重要なものとして、今日でも評価されています。

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