リチャード・ハモンド

リチャード・ハモンド：事故と復活、そして走り続ける男

リチャード・マーク・ハモンド。その名は、自動車番組ファンにとって特別な響きを持つだろう。イギリス出身のテレビ司会者である彼は、人気BBC番組『トップ・ギア』での活躍で世界的な知名度を獲得した。しかし彼のキャリアは、華々しい成功だけでなく、数々の危険な挑戦と、それに伴う大きな事故によって彩られている。

地方ラジオから世界へ

ウェスト・ミッドランズに生まれ、ノース・ヨークシャーで育ったハモンドは、美術大学卒業後、BBC系列の地方ラジオ局でキャリアをスタートさせた。穏やかな物腰と、時折見せるユーモラスな語り口が持ち味で、着実にリスナーを獲得していった。しかし、彼の名を世界に知らしめたのは、間違いなく『トップ・ギア』である。

2002年から参加した同番組で、ジェレミー・クラークソン、ジェームズ・メイと共に、視聴者を魅了する数々の自動車企画を展開。低身長を「ハムスター」という愛称でいじられることも多く、番組内では彼の人物像もふんだんに盛り込まれ、視聴者からの支持を集めていった。 番組の人気上昇と共に、ハモンド自身も多くの番組を担当するようになった。

死神とのダンス：ジェットカー事故と奇跡の生還

2006年、ジェットエンジン搭載車「ヴァンパイア」での最高速記録挑戦。ハモンドは時速464キロに達した瞬間、タイヤバーストによる大クラッシュに見舞われた。横転、回転、そして車体が草むらに激しく突き刺さる。奇跡的に一命は取り留めたものの、脳障害、記憶喪失、うつ病などの後遺症を負った。

事故直後、彼の回復を祈る声が世界中から寄せられた。『トップ・ギア』の放送延期も決定。しかし、ハモンドは驚くべき回復力を見せ、約2ヶ月後には番組に復帰。事故の様子を自ら解説する映像は、視聴者に深い感銘を与えた。この事故は彼のキャリアに大きな影を落とすどころか、かえって彼の人気を高める結果となった。本人も事故をジョークのネタにするなど、前向きな姿勢を貫いている。

しかし、この事故映像は、ハモンド自身と家族の意向により、英国国外では配信が停止されている。その様子は、彼の自伝『On The Edge: My Story』で詳細に語られている。

そして新たな挑戦へ

その後も、ハモンドは危険なチャレンジを続け、『トップ・ギア』を卒業後は、ジェレミー、ジェームズと共にAmazonプライムビデオで『グランド・ツアー』をスタートさせた。しかし、2017年、スイスでのヒルクライムイベントで電気スーパーカーを運転中に再び大きな事故を起こす。炎上する車から生還した彼は、再び奇跡的な回復を見せた。

多彩な才能と個性

ハモンドは『トップ・ギア』以外にも多くの番組に出演。科学番組『Brainiac: Science Abuse』、『ハイテクのルーツ』など、その活動は多岐に渡る。コラムニストとしても活動し、日本にも幾度となく来日している。また彼はポルシェ愛好家であり、ベース演奏もこなすマルチな才能の持ち主でもある。

個性と愛着

ハモンドは、番組で使用する安価な中古車に愛着を持ち、名前を付けることでも知られる。特に、アフリカスペシャルで活躍したオペル・カデット「オリバー」への愛着は深く、番組を離れてからも大切に保管している。この「オリバー」は彼の冠番組『Richard Hammond's Blast Lab』のセットとしても使用され、現在も彼の大切なパートナーとして存在している。

ジェレミー、ジェームズとの関係

ジェレミーやジェームズとの関係は、番組内外を通じて良好な関係が続いている。彼らとの軽妙な掛け合いは、『トップ・ギア』、『グランド・ツアー』双方で番組の大きな魅力となっている。身長差や性格の違いからくるいじり合いは、時に厳しいながらも、彼ら三人の強い絆を感じさせるものだ。

これからも走り続ける

数々の事故を乗り越え、今もなお第一線で活躍するハモンド。彼の冒険は、これからも続く。その挑戦とユーモア、そして常に前を向く彼の姿勢は、多くの人々に勇気を与え続けている。

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