リック・ベイカー

リック・ベイカー：ハリウッド特殊メイクの巨匠

1950年生まれのリック・ベイカーは、アメリカ合衆国を代表する特殊メイクアップアーティストとして知られています。彼のキャリアは、特殊メイク界の巨匠、ディック・スミスへの師事から始まりました。『エクソシスト』などへの参加を経て、才能を開花させていきます。

特に注目すべきは、1977年の『スター・ウォーズ』への参加です。伝説的な特殊メイクアーティスト、スチュアート・フリーボーンと共にエイリアンマスクの製作に携わり、映画史に名を刻みます。その後も数々の作品で類まれな才能を発揮し、1982年、第54回アカデミー賞において新設されたアカデミーメイクアップ賞を『狼男アメリカン』で受賞。これは同賞の初代受賞者という栄誉でもあります。

彼のキャリアにおいて『狼男アメリカン』と『ウルフマン』（後者が現在のところ最後のメイクアップ賞受賞作品）は、特に高い評価を得た作品です。これらの作品で彼が作り上げた狼男の特殊メイクは、リアルさと表現力の高さで、観客に大きな衝撃を与えました。この類まれな技術によって、彼はアカデミーメイクアップ賞を7回も受賞、さらに3回のノミネート、そして視覚効果賞のノミネートを1回経験しています。

ベイカーの才能は映画界にとどまりません。1981年には特殊効果スタジオ「シノベーション・スタジオ」を設立し、様々なプロジェクトに携わってきました。中でも、マイケル・ジャクソンのミュージックビデオ『スリラー』での特殊メイク担当は、彼の知名度をさらに高める一役を担いました。

長年にわたるハリウッドへの貢献の後、2015年には南カリフォルニア公共ラジオにおいて、映画業界からの引退を表明しました。しかし、彼の残した作品群は、後世のアーティストたちにとって、永遠に続くインスピレーションの源となるでしょう。

代表作品とキャリア

ベイカーの作品リストは、ハリウッド映画史そのものを物語るものです。彼の初期の作品には、『シュロック』（1971）、『吸盤男オクトマン』（1971）、『Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男』（1972）、『Live and Let Die』（1973）、『ミス・ジェーン・ピットマン物語』（1974）、『悪魔の赤ちゃん』（1974）、『デス・レース2000年』（1975）、『スクワーム』（1976）、『キングコング』（1976）、『ムーン・ビースト』（1976）、『ゼブラ軍団』（1976）、『巨大生物の島』（1976）、『溶解人間』（1977）、『フューリー』（1978）、『悪魔の赤ちゃん2』（1978）、『アメリカン・クリスマスキャロル』（1979）、『タニアズ・アイランド』（1980）、『ハウリング』（1980）、『狼男アメリカン』（1981）、『縮みゆく女』（1981）、『ファンハウス/惨劇の館』（1981）、『ヴィデオドローム』（1982）、などがあります。

80年代以降も、『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』（1984）、『ラットボーイ』（1986）、『悪魔の赤ちゃん3/禁断の島』（1986）、『マックス、モン・アムール』（1986）、『ハリーとヘンダスン一家』（1987）、『星の王子ニューヨークへ行く』（1988）、『愛は霧のかなたに』（1988）、『ムーンウォーカー』（1989）、『グレムリン2 新・種・誕・生』（1990）、『ロケッティア』（1991）、『ウルフ』（1994）、『エド・ウッド』（1994）、『バットマン・フォーエバー』（1995）、『ナッティ・プロフェッサークランプ教授の場合』（1996）、『さまよう魂たち』（1996）、『エスケープ・フロム・L.A.』（1996）、『シークレット/嵐の夜に』（1997）、『メン・イン・ブラック』（1997）、『マイティ・ジョー』（1998）、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』（1999）、『エディ&マーティンの逃走人生』（1999）、『グリンチ』（2000）、『PLANET OF THE APES/猿の惑星|PLANET OF THE APES_猿の惑星』（2001）、『メン・イン・ブラック2』（2002）、『ザ・リング』（2002）、『ホーンテッドマンション』（2003）、『ヘルボーイ』（2004）、『ウェス・クレイヴン's カースド』（2005）、『ザ・リング2』（2005）、『キング・コング』（2005）、『もしも昨日が選べたら』（2006）、『X-MEN:ファイナルディシジョン』（2006）、『マッド・ファット・ワイフ』（2007）、『魔法にかけられて』（2007）、『ウルフマン』（2010）、『メン・イン・ブラック3』（2012）、『マレフィセント』（2014）など、多岐に渡るジャンルで活躍しました。

これらの作品において、彼は単に特殊メイクを担当しただけでなく、時に俳優としてカメオ出演も果たしています。例えば、『メン・イン・ブラック』では、エイリアンに襲われたカフェ店員を演じ、『メン・イン・ブラック2』では異星人の入国審査官を演じています。さらに『キング・コング』（2005年版）では複葉機のパイロット役で出演するなど、映画制作への情熱を様々な形で示しました。

リック・ベイカーの功績は、数々の受賞歴や作品リストから明らかです。彼の革新的な特殊メイク技術は、映画というメディアの可能性を大きく広げ、現代の映画表現に多大な影響を与え続けています。

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