リノ・エアレース

正式名称を「リノ・ナショナル・チャンピオンシップ・エアレース＆エアショー（Reno National Championship Air Races & Air Show）」というこのイベントは、アメリカ合衆国ネバダ州北西部に位置するリノ市で、例年9月に開催されてきました。1964年に幕を開け、エアレースの分野では世界で最も長い伝統を誇る大会として知られています。しかしながら、主催者である空港当局は、環境の変化や安全性への懸念などを踏まえ、2023年の開催を最後にエアレース競技を終了させ、今後は航空ショーのみの実施とする方針を明らかにしました。長年にわたり多くの航空ファンを魅了してきた高速周回レースは、惜しまれつつその歴史に幕を下ろすこととなったのです。

概要

レースの舞台は、リノ市街地から北西へおよそ16km離れたリノ・ステッド空港に設けられた特設コースです。競技は、地表に設置されたパイロンを目印とする楕円形のコースを、航空機が高度150メートル以下の低空で高速周回する形式で行われます。パイロットは、定められた周回数をいかに速く飛ぶかを競います。

2017年時点では、参加する航空機の種類や性能に応じて6つの異なるクラスに分かれて競技が行われていました。それぞれのクラスには定められたコース距離があり、機体特性に合わせたレギュレーションが設けられています。

レース期間中は、競技の合間に民間航空機によるアクロバット飛行や、アメリカ軍機による迫力あるデモンストレーション飛行なども披露され、来場者を楽しませました。

レースクラス

リノ・エアレースは、参加機の多様性に応じて以下のクラスが設定されていました。

複葉機クラス: レース距離は約5.12km。エンジン出力200馬力前後の機体が参加し、最高速度は370km/hを超えます。
T-6クラス: レース距離は約8.14km。1930年代から60年代にかけてアメリカ軍の練習機として活躍したノースアメリカンT-6テキサンを、ほぼ無改造で使用するワンメイクレースです。最高速度は370km/h強に達します。
フォーミュラワンクラス: レース距離は約5.02km。使用するエンジンがコンチネンタル・モータース製のO-200（排気量3.28L、出力100馬力）に統一されているのが特徴です。最高速度は400km/hを超えるスピード競技です。
スポーツクラス: レース距離は約10.25km。キット機として5機以上生産された航空機体と、排気量10.65Lクラスのエンジンを使用するクラスです。最高速度は560km/h強と、より高速な争いが展開されます。
ジェットクラス: レース距離は約13.4km。主に指定された機種のジェット練習機が使用されます。最高速度は790km/h以上にも達し、現代的な高速レースが見られます。
アンリミテッドクラス（無制限）: レース距離は約13.65km。重量が4,500ポンド（約2,041kg）以上のレシプロ機であれば、エンジンの改造などほぼ無制限のチューニングが許されているのが最大の特徴です。このクラスに参戦するのは、多くの場合、第二次世界大戦中に活躍した戦闘機をベースに、エンジン出力が4000馬力にも達するように極限まで改造された機体です。有名な機体としては、ノースアメリカンP-51Dマスタング、ホーカーシーフューリー、グラマンF8Fベアキャットなどがあります。最高速度は785km/hを優に超え、低空での超高速バトルは当イベントのハイライトであり、特にアメリカ国内では、往年の名機が現代の技術で甦り、しのぎを削る姿に熱狂的な人気を集めていました。

歴史と事故

リノ・エアレースの長い歴史の中で、最も痛ましい出来事の一つとして、2011年9月16日に発生した事故が挙げられます。アンリミテッドクラスに出場していたP-51改造機「ギャロッピング・ゴースト」が飛行中に制御不能となり、観客席に墜落するという悲劇的な事故が発生しました。この事故により、パイロットを含む11名の尊い命が失われ、同年開催中だったレースは即座に中止されることとなりました。安全確保のための対策はその後も強化されましたが、この事故は高速・低空飛行を伴うエアレースinherentのリスクを改めて浮き彫りにしました。

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