リュティエ

リュティエ：競走馬から伝説の種牡馬へ

1965年、フランスのカルヴァドス県で生まれたリュティエ(Luthier)は、弦楽器職人を意味する名を持つサラブレッド競走馬でした。所有者はギー・ド・ロチルド氏、調教師はジョフロワ・ワトソン氏という、恵まれた環境で競走馬としてのキャリアをスタートさせました。

競走馬時代は、1967年のデビュー戦を勝利で飾るなど華々しく幕を開けました。翌1968年には、ノアイユ賞、リュパン賞と重賞を制覇。そして、同年8月にはジャック・ル・マロワ賞で優勝、最大の輝きを放ちました。その後は、クラシック路線に挑戦するものの勝利には届かず、1969年をもって競走馬を引退しました。

しかし、リュティエの真の活躍は、引退後から始まりました。バス＝ノルマンディーのエトレアム牧場で種牡馬となったリュティエは、競走馬時代をはるかに凌駕する成功を収めます。初年度産駒の活躍により、1973年にはフランスファーストクロップ・リーディングサイアーに輝き、1976年にはフランスリーディングサイアーの称号を獲得。さらに、1982年から1984年まで3年連続でリーディングサイアーの座に就き、その卓越した繁殖能力を証明しました。

リュティエは、1981年にその生涯を終えるまでに、61頭ものステークス勝ち馬を輩出しました。代表産駒として挙げられるのは、1984年の凱旋門賞優勝馬サガスです。他にも、プール・デッセ・デ・プーリッシュを制したリヴァークィーン、イタリア牝馬二冠を達成したライトバンク、グランクリテリウムを制したサンシリアンなど、数多くの名馬が彼の血を受け継いでいました。

リュティエの血統は、種牡馬としても大きな成功を収めました。サガスやサンシリアンといった産駒は種牡馬として活躍し、サガスからはブリーダーズカップ・クラシック優勝馬アルカングが誕生しました。さらに、母の父としても絶大な人気を誇り、1987年から複数年に渡りフランスリーディングブルードメアサイアーのタイトルを獲得しました。

リュティエの血統は日本にも大きな影響を与えました。彼の直仔は日本での活躍はありませんでしたが、ダンディルートという産駒が日本に輸入され種牡馬として大成功を収め、ビゼンニシキなどの活躍馬を輩出しました。また、ノーリュートやヤワといった他の産駒も日本に輸入され、中山大障害優勝馬ブロードマインドや、岩手県競馬の名馬モリユウプリンスといった活躍馬が誕生しました。さらに、ビゼンニシキの産駒には、マイルチャンピオンシップを連覇したダイタクヘリオスも含まれます。

しかし、リュティエの父系はその後衰退していき、現在では平地競走の世界ではその血統はほとんど見られなくなりました。現在では、障害競走の分野でその血統が生き続けています。

リュティエは、競走馬としての華々しい活躍だけでなく、種牡馬としての類まれな成功によって、フランス競馬史に大きな足跡を残しました。その血統は、多くの名馬を輩出し、日本競馬にも貢献しています。彼の功績は、長く記憶されることでしょう。

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