リンカーン記念堂のリフレクティング・プール

リンカーン記念堂リフレクティング・プール

ワシントンD.C.の中心部に位置するナショナル・モールの最西端、リンカーン記念堂の荘厳な佇まいの前に広がるのが、このリフレクティング・プールです。正式名称は「リンカーン記念堂リフレクティング・プール」と呼ばれ、アメリカ合衆国の首都を代表するランドマークの一つとして広く認識されています。

概要

このプールは、ナショナル・モールの東へ向かって直線的に配置されており、西に位置するリンカーン記念堂から、第二次世界大戦記念碑を挟んで、遠くに聳え立つワシントン記念塔まで続いています。その名称が示す通り、最大の特徴は水面に周囲の景色を映し出す「反射（リフレクション）」です。特に晴れた日には、ワシントン記念塔の尖塔や、リンカーン記念堂の列柱が水鏡のように鮮やかに映し出されます。また、日中の太陽の光や、夜間にライトアップされたリンカーン記念堂の姿も、水面に揺らめきながら幻想的な光景を作り出します。この反射する景観は、ワシントンD.C.を象徴する最も有名なイメージの一つとなっています。

プールの全体的な規模は、長さがおよそ618メートル（約2029フィート）、横幅がおよそ51メートル（約167フィート）に及びます。総貯水量は約2550万リットル（約675万ガロン）と推定されています。深さに関しては、両端部分が約46センチメートル（約18インチ）と比較的浅く、中央部分でも約76センチメートル（約30インチ）と、人が立ち入るには危険ではない程度の深さ設計となっています。

改修工事

リンカーン記念堂に隣接するこのプールは、近年大規模な改修工事が実施されました。2011年5月に開始され、約1年半の期間を費やし、総工費はおよそ3,070万ドルが投じられました。この改修の重要な点の一つは、水の供給システムの見直しです。それまでの方式は、市の水道水を simply 溜めているだけでしたが、改修後はタイダルベイスン（ポトマック川の入り江）からの水を導入し、循環させるシステムへと変更されました。これは水質の維持や環境負荷の軽減に貢献するものと考えられます。さらに、プールの南北に沿って長年踏み荒らされ擦り切れていた芝生部分は、新たに舗装された歩道へと生まれ変わりました。これにより、訪問者はより快適にプールの周囲を散策できるようになりました。

文化的影響と関連作品

リンカーン記念堂リフレクティング・プールは、単なる水景施設としてだけでなく、アメリカ合衆国の歴史や文化においても重要な役割を果たしてきました。キング牧師の「私には夢がある（I Have a Dream）」演説が行われた1963年のワシントン大行進など、数多くの歴史的な集会やデモ行進の舞台となり、国民的な意思表示の場としての機能を果たしています。

また、映画や写真といった様々なメディアにも頻繁に登場します。特に有名なのは、トム・ハンクス主演の映画『フォレスト・ガンプ』です。作中、主人公フォレスト・ガンプが、ヒロインであるジェニー・カランとプールの中心付近で感動的な再会を果たし、抱き合うシーンは、多くの人々の記憶に残る印象的な場面です。この他にも複数の映画に登場しており、その象徴的な景観は映画ファンにも親しまれています。さらに、ワシントン記念塔やリンカーン記念堂が水面に美しく反射した構図は、絵葉書やポスターの写真としても数多く流通しており、ワシントンD.C.の美しい風景を伝える上で欠かせない要素となっています。

リフレクティング・プールは、ワシントンD.C.のナショナル・モールにおける重要な要素であり、その美しさ、歴史的な意義、そして文化的影響力によって、今なお多くの人々を惹きつけています。ナショナル・モールには、アメリカ合衆国議会議事堂の近くにも別のリフレクティング・プール（キャピタル・リフレクティング・プール）が存在しますが、一般的に「リフレクティング・プール」として語られる際には、このリンカーン記念堂前のプールを指すことが多いようです。

もう一度検索