リンゴを持つ青年

リンゴを持つ青年

『リンゴを持つ青年』（原題：Ritratto di giovane con pomo）は、イタリアの巨匠ラファエロ・サンツィオによって1504年に制作された貴重な絵画です。この作品は、油彩で描かれた肖像画であり、ラファエロの初期の作品の一つとして重要視されています。絵画はもともとウルビーノ公爵家のコレクションに含まれていた後、メディチ家に加わり、現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

作品の詳細

この絵画には、4分の3正面を向いた青年の半身像が描かれています。青年は赤いベレー帽をかぶり、白いシャツとウールのベストの上に、当時の流行であるロボーネという上着を着ています。このロボーネは金の格子模様が施され、テンの毛皮で裏打ちされています。彼の鋭い顔立ちは長い黒髪によって引き立てられ、目は深く強い視線を放ちながらも、鑑賞者と視線を交わすことを避けるようにわずかにそらされています。彼の表情は穏やかである一方、その奥には力強さが感じられます。

青年が持つ黄金のリンゴは、この肖像が制作された背景や重要な出来事を暗示されていると言われています。特に彼は、ウルビーノ公グイドバルド・ダ・モンテフェルトロの養子であり、後にウルビーノ公となるフランチェスコ・マリーア1世・デッラ・ローヴェレであると考えられています。この作品が描かれた1504年、彼は教皇ユリウス2世の甥として重要な立場にあり、そのためリンゴは彼の身分や未来の公国の後継者としての象徴とも解釈できます。

技術的側面

この作品は、ラファエロがウルビーノで初期の学びを経て、フィレンツェに移る直前の技術を示しています。彼の画風には、ウルビーノでの表現を継承しつつ、フィレンツェの洗練された技術が取り入れられており、このことが青年の描写の複雑さを際立たせています。また、彼が描く人物像は、過去の作品に見られる厳格な正面像から、複雑で感情豊かな表現へと進化しています。

作品の来歴

この肖像画は元々ウルビーノ公爵のコレクションに収められており、1631年にはインベントリに記載されていました。デッラ・ローヴェレ家の最後の子孫であるヴィットーリア・デッラ・ローヴェレがメディチ家と結婚したことにより、この作品はメディチ家に移り、その後フィレンツェ類の別荘や美術館を経て、現在のウフィツィ美術館に至っています。

1793年から1928年までピッティ宮殿に保存されていた時期もあり、ナポレオンの侵攻の影響で一時的にパレルモに移されるなど、その来歴は波乱万丈です。

まとめ

『リンゴを持つ青年』は、ラファエロの初期の作品として重要な位置付けを持ち、彼の技術的成長と当時の社会背景を象徴する作品となっています。鑑賞者は、この作品を通じて、青年の表情や姿勢、背景に潜む物語を感じ取ることができ、ルネサンス期の精神や美術の豊かさを再確認することができるでしょう。

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