リンパ球増多症

リンパ球増多症とは

リンパ球増多症（りんぱきゅうぞうたしょう、英語：Lymphocytosis）とは、私たちの体液である血液中に存在するリンパ球という白血球の一種が、正常とされる数や割合を超えて増加する状態のことです。

この状態は、主に二つのカテゴリーに分けられます。

1. 絶対的リンパ球増多症: 血液1マイクロリットルあたりのリンパ球の数が、正常とされる範囲を超えて増加している状態です。具体的な基準値は年齢によって異なり、成人では5,000/μL（5.0×10⁹/L）以上、小児では7,000/μL以上、そして乳児では9,000/μL以上が一つの目安とされています。
2. 相対的リンパ球増多症: 血液中の白血球総数に対するリンパ球の割合が、正常とされる範囲を超えて増加している状態です。通常、リンパ球は循環白血球の20%から40%を占めていますが、この割合が40%を超えると相対的リンパ球増多症とみなされることがあります。

リンパ球増多症の原因

リンパ球増多症は、様々な病態や状況によって引き起こされます。特に感染症、そしてリンパ系に関連する悪性疾患が主な原因として知られています。

主な原因疾患・病態

感染症: 体が病原体と戦っている際にリンパ球が増加することがよくあります。特にウイルス感染症で顕著であり、伝染性単核球症（腺熱）、肝炎、サイトメガロウイルス感染症などが代表的です。百日咳のような一部の細菌感染症や、トキソプラズマ症、アメリカトリパノソーマ症（シャーガス病）といった原虫感染症、さらには結核やブルセラ症のような慢性的な細胞内細菌感染症でも見られます。小児期においては、感染症がリンパ球増多症の最も一般的な原因の一つです。

リンパ増殖性疾患: リンパ球自体が無秩序に増殖してしまう病気です。慢性リンパ性白血病や、急性リンパ芽球性白血病、さらにはリンパ腫といった悪性腫瘍がこれにあたります。特に高齢者では、これらのリンパ増殖性疾患がリンパ節の腫れと共にリンパ球増多症として発見されるケースが多く見られます。

その他の原因:
脾臓（ひぞう）を摘出した後にもリンパ球が増加することがあります。
非常にまれな遺伝性の疾患として、CARD11関連先天性B細胞リンパ球症（ベンタ病とも呼ばれます）が知られています。
年齢が2歳未満の乳幼児では、生理的にリンパ球の割合が高い傾向があります。
急性ウイルス感染症の後などに見られることがあります。
全身性エリテマトーデスなどの結合組織疾患。
甲状腺機能亢進症（甲状腺中毒症）やアジソン病（慢性副腎皮質機能低下症）といった内分泌疾患。
脾臓が腫れて、リンパ球が脾臓に多く貯留している場合（脾臓血球貯留を伴う脾臓肥大）。

診断方法

リンパ球増多症は、通常、医療機関で行われる一般的な血液検査である「全血球算定（血算）」によって発見されます。この検査では、血液中の赤血球、白血球、血小板などの数や、白血球の種類ごとの割合などが詳しく調べられます。

全血球算定で白血球の「鑑別数」が測定される場合、総白血球数にリンパ球の割合を乗じることでリンパ球の絶対数を算出できます。また、より精密な検査として、フローサイトメトリーという手法を用いてリンパ球の数や種類を直接測定することもあります。

関連する病態

リンパ球減少症: リンパ球増多症とは逆に、血液中のリンパ球数が正常範囲より減少している状態です。
白血球増多: 白血球全体（好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球など全て）の総数が正常範囲より増加している状態を指します。

リンパ球増多症は、多くの場合、体の内部で何らかの活動（特に感染への応答）が起こっているサインです。原因を特定するためには、さらなる検査が必要となることがあります。

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