リー・モーガン・ラスト・アルバム

『リー・モーガン・ラスト・アルバム』は、偉大なジャズ・トランペット奏者、リー・モーガンが1971年に行ったセッションを収録し、彼の急逝を経て1972年にリリースされた作品です。原題を『The Last Session』と冠しており、その名の通り、モーガンがリーダーとしてスタジオで残した最後の公式録音となりました。

このアルバムが持つ歴史的な重みにもかかわらず、録音後も彼の音楽活動は続いていました。実際、本作のセッションからおよそ半月後には、本作にも参加したフルート奏者ボビー・ハンフリーのアルバム『フルート・イン』にサイドマンとして迎えられています。さらに、翌1972年2月にはチャールズ・アーランドの作品『Intensity』にも参加しており、精力的に活動を続けていた最中での出来事でした。

本作には、トランペット／フリューゲルホルンを演奏するリー・モーガンを中心に、以下の実力派ミュージシャンたちが集結しています。

リー・モーガン - トランペット、フリューゲルホルン
ビリー・ハーパー - テナー・サクソフォーン、アルトフルート
グレイシャン・モンカー3世 - トロンボーン
ボビー・ハンフリー - フルート
ハロルド・メイバーン - ピアノ、エレクトリックピアノ
レジー・ワークマン - ダブル・ベース、パーカッション
ジミー・メリット - エレクトリック・アップライト・ベース
フレディ・ウェイツ - ドラムス、リコーダー

編成からも分かるように、管楽器奏者が多く参加しており、厚みのあるアンサンブルが特徴です。また、エレクトリックピアノやエレクトリック・アップライト・ベースの使用は、当時のジャズ・シーンにおけるエレクトリックサウンドへの流れを反映しており、モーガン自身も新たなサウンドの探求を行っていたことがうかがえます。

収録されている楽曲は全5曲。

「カプラ・ブラック」 - "Capra Black" (Billy Harper) - 15:36
「イン・ホワット・ディレクション・アー・ユー・ヘッディド?」 - "In What Direction Are You Headed?" (Harold Mabern) - 16:23
「アンジェラ」 - "Angela" (Jymie Merritt) - 6:25
「クロッケー・バレエ」 - "Croquet Ballet" (B. Harper) - 10:59
* 「インナー・パッションズ・アウト」 - "Inner Passions Out" (Freddie Waits) - 17:35

特に「カプラ・ブラック」と「クロッケー・バレエ」はテナー・サックス奏者ビリー・ハーパーが作曲した楽曲です。「クロッケー・バレエ」は、後にハーパー自身のリーダー・アルバム『ブラック・セイント』でも再演されています。いずれの楽曲も長尺で、ミュージシャンたちの自由な演奏と深いインタープレイを存分に味わうことができます。

オリジナルのLPレコード (品番: BST-84901) は2枚組で発売されましたが、その後のCDでの再発時には1枚に収められる形態が一般的となっています。

音楽評論家のMichael G. Nastos氏は、オールミュージックにおいて本作に5点満点中4点という高い評価を与えています。彼の評では、「モーガンが想像力豊かだった時期の作品であり、当時ライバルであったフレディ・ハバードやウディ・ショウらがエレクトリック・サウンドを取り入れていた流れに、モーガンも応じたものである」と言及しています。さらに、「輝かしい才気と先進的な思考を持っていたモーガンが、これほど若い年齢でこの世を去ったことは、非常に残念でならない」と、その早すぎる死を悼む言葉も添えられており、本作がリー・モーガンのキャリアにおける重要な、そして惜しまれる終着点であることを示唆しています。

『リー・モーガン・ラスト・アルバム』は、リー・モーガンがその短い生涯の最後に残した創造的なエネルギーと、時代のエッセンスを取り入れようとした探求心を示す貴重な記録であり、彼のファンにとって聴き逃せない一枚と言えるでしょう。

もう一度検索