ルイス・ジョンソン (ベーシスト)

ルイス・ジョンソン

ルイス・ジョンソン（Louis Johnson、1955年4月13日 - 2015年5月21日）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身の伝説的なベーシストです。兄のジョージと共にザ・ブラザーズ・ジョンソンを結成し、ファンク・ミュージックのシーンで成功を収めたほか、1970年代から80年代にかけての音楽界において、最も引く手あまたのセッションミュージシャンの一人として活躍しました。彼のベースは、マイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』、『スリラー』、『デンジャラス』といった歴史に残るアルバムや、「ビリー・ジーン」などの代表曲、さらにはジョージ・ベンソン、ハーブ・アルパート、クインシー・ジョーンズといった多数の著名アーティストの作品で聴くことができます。特に世界的な大ヒットとなった『スリラー』に貢献したことは広く知られています。

彼のトレードマークは、その超絶技巧に由来する「サンダー・サム（Thunder Thumbs）」というニックネームと、圧倒的にダイナミックなスラップ奏法です。このスラップ・ベースは、親指による弦への強いアタックやミュートを駆使し、まるで打楽器のようなサウンドを生み出します。掌を開いて弦を叩く独特のスタイルは、ブラザーズ・ジョンソンのヒット曲「ストンプ」のミュージックビデオなどでも確認できます。「ストンプ」のスラップソロは、その複雑なリズムとテクニックで多くのファンを驚かせました。また、彼はスラップだけでなく、スライド、ハンマリング・オン、プリング・オフといった指弾きの技術と組み合わせることで、非常にグルーヴィーで複雑なベースラインを構築しました。このアプローチは、ラリー・グラハムらと共にスラップ・ベースを音楽シーンに定着させ、マーカス・ミラーをはじめとする後進のベーシストたちに計り知れない影響を与えました。

ルイス・ジョンソンのサウンドを語る上で欠かせないのが、彼が多用した楽器、特にミュージックマン・スティングレイです。レオ・フェンダーが設計に関わったとされるこのベースは、クリアでパワフルな中高域のサウンドが特徴であり、ジョンソンのダイナミックなスラップ・プレイと組み合わさることで、その個性を最大限に引き出しました。『オフ・ザ・ウォール』収録の「ゲット・オン・ザ・フロアー」や、クインシー・ジョーンズのアルバム『デュード』での演奏は、スティングレイを使ったアクティブ・ベースの可能性を多くのスラッパーに示しました。一方で、ブラザーズ・ジョンソンの初期作品などではフェンダー・ジャズベースも頻繁に使用しており、楽曲に応じて柔軟に楽器を選んでいたことが伺えます。

彼のプレイの革新性を示す例として、クインシー・ジョーンズの「キコ」が挙げられます。この曲では一般的なプラッキング（指で弦を引っ張る奏法）を一切用いず、右手親指によるスラッピングと、左手中指を使った巧みなミュート・テクニックだけでベースラインを組み立てています。このミュートとアタックの組み合わせが、独特のパーカッシヴな「スラップ・チョーク」サウンドを生み出し、複雑なカウンター・ポイントを形成しています。アール・クルーの「ダンス・ウイズ・ミー」での印象的なフィルインも、彼のサウンド・メイクの一端を示しています。

ルイス・ジョンソンは、ファンク、R&B、ポップスといった様々なジャンルにおいて、ベーシストの表現力を大きく広げた人物です。彼の「サンダー・サム」は単なるニックネームではなく、革新的なテクニックとサウンドの代名詞となりました。2015年5月21日、肝不全により惜しまれつつこの世を去りましたが、彼の残した音楽遺産、特にスラップ・ベースにおける功績は不滅であり、今なお多くのミュージシャン、リスナーに影響を与え続けています。

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