マーカス・ミラー

マーカス・ミラー：音楽の多才な巨匠

マーカス・ミラー（Marcus Miller）は、1959年6月14日生まれのアメリカ出身のベーシストであり、音楽プロデューサー、作曲家、編曲家としても広く知られています。ジャズ・フュージョン界を中心に、ジャンルを超えた活躍を続けている彼は、その卓越した才能で世界中の音楽ファンを魅了し続けています。

音楽的ルーツと成長

ニューヨークで生まれたミラーは、幼少の頃から音楽に囲まれた環境で育ちました。ジャズピアニストである父のいとこ、ウィントン・ケリーや、教会でオルガン奏者を務めていた父親の影響を受け、幼い頃からクラリネットを演奏し、ジャズやクラシック音楽に親しんでいました。13歳の時、ジャクソン・ファイブの演奏をテレビで見たことをきっかけに、ポップスやR&Bの世界にも関心を抱くようになります。特に、メンバーであるジャーメイン・ジャクソンの影響を受け、エレクトリックベースを手にした彼は、当時音楽シーンを席巻していたスタンリー・クラーク、ラリー・グラハム、ジャコ・パストリアス、ジェームス・ジェマーソンといった名ベーシスト達の演奏をコピーしながら、自身の演奏技術を磨いていきました。

15歳で読譜力を認められ、プロのミュージシャンとしての活動を開始。1979年からはスタジオ・ミュージシャンとして、グローヴァー・ワシントン・ジュニアの「ワインライト」、ドナルド・フェイゲンの「ナイトフライ」、ブレッカー・ブラザーズの「Detente」、渡辺香津美の「TO CHI KA」、渡辺貞夫の「オレンジ・エクスプレス」など、数々の話題作に参加しました。

マイルス・デイヴィスとの出会いと世界的名声

1981年、ミラーはマイルス・デイヴィスのアルバム『ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン』にベーシストとして抜擢され、ワールドツアーにも参加。マイルスの復帰をサポートし、世界的な注目を集めました。また、プロデューサーとしても才能を発揮し、デビッド・サンボーンの「Voyeur」、ルーサー・ヴァンドロスの「Never Too Much」などのヒット作を手掛け、グラミー賞を受賞。1986年には、プロデュース、楽曲提供、演奏など、全面的にバックアップを行ったマイルス・デイヴィスの「TUTU」が大ヒットを記録し、1987年のグラミー賞・最優秀ジャズ・インストゥメンタル・パフォーマンス・ソロ部門を受賞。これにより、ミラーは一躍、世界的な名声を獲得しました。

多彩な活動と音楽的探求

その後も、ミラーは自身のグループでの活動に加え、マイケル・ジャクソン、マライア・キャリー、ビヨンセなど、世界的なスターのレコーディングに参加。エリック・クラプトンらと結成した「レジェンズ」、ヴィクター・ウッテン、スタンリー・クラークと組んだSMVなどの活動も展開しました。また、1988年からNBCで放送された「ナイト・ミュージック」での音楽監督や、映画のサウンドトラック制作など、多岐にわたる活動を続けています。2002年には、自身のソロ作「M2 パワー・アンド・グレイス」でグラミー賞を受賞。2012年からは、その充実した活動が評価され、ユネスコの音楽平和大使を務めています。

愛用機材とその特徴

ミラーは、1977年製のフェンダー・ジャズベースを愛用しています。メイプル指板とネックにアッシュのボディという仕様で、ロジャー・サドウスキーによってアクティブ回路が搭載されています。ボディ本体の大半を覆うような黒いピックガードが特徴的で、ベース単体でトレブル・ベースのトーン調整が可能です。その明瞭な低音と高音の両方が出せるサウンドは「NYCサウンド」と呼ばれ、他のベーシスト達に大きな影響を与えました。

近年のライブでは、ツアーなどの状況を考慮し、同年代のモデルを同じ仕様に改造したものや、モニターとして契約したSire Guitarsの「マーカス・ミラー・モデル」のベースを使用しています。メインベースの他に、フェンダー・ジャズベースやミュージックマンのフレットレス、フォデラ、サドウスキーなどの5弦ベース、アコースティック・ベースやダブル・ベースも使用することがあります。

アンプは、1990年代前半にはSWRのレッドヘッドやゴライアスがトレードマークであり、ベースアンプにツイータを搭載するスタイルを浸透させました。その後、EBSを経て、現在はMark Bassとエンドースメント契約を締結し、マーカス・ミラーモデルのアンプを使用しています。

エフェクターは、時期によって変遷がありますが、近年ではEBSのコンパクト（オーバードライブ、コンプレッサー、オクターバー、オートワウ、コーラス、リバーブ）を基本として、ファズ、ワウペダルなどを加えたフットペダル系で構成されています。

弦は、基本的にDR社製の「マーカス・ミラー・シグネチュア」モデルを使用しており、2015年からはJim Dunlopとも契約し、シグネチュアモデルの弦が登場しています。

DIは、ディメター(Demeter)社製のVTDB-2B(チューブ・ダイレクト)を使用しています。同機は真空管に「12AX7」を使用するダイレクトボックスで、レコーディングではベースアンプが使用されることは少なく、ベースからDIを通してミキシングコンソールにインプットすることが多いと言われています。

ディスコグラフィー

数多くのリーダー・アルバムや参加作品を発表しており、彼の音楽は幅広い層のファンに支持されています。

まとめ

マーカス・ミラーは、ベーシストとしてだけでなく、プロデューサー、作曲家、編曲家としても、音楽史に名を刻む偉大なアーティストです。彼の音楽に対する情熱と飽くなき探求心は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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