ルイゾン・ボベ

ルイゾン・ボベ（Louison Bobet, 1925年3月12日 - 1983年3月13日）は、フランス、イル＝エ＝ヴィレーヌ県サンメーン・ルグラン出身の卓越した自転車競技選手です。彼は、ツール・ド・フランス史上初の総合3連覇を達成したことで、その名を歴史に刻みました。

ツール・ド・フランス3連覇への軌跡

ボベが初めてツール・ド・フランスに出場したのは、第二次世界大戦後初の開催となった1947年でしたが、途中棄権という結果に終わりました。その後も彼はツールに参加を続けましたが、1950年の総合3位が最高位であり、優勝したフェルディナント・キュプラーには22分19秒もの差をつけられました。当時、ツールは国別対抗戦の形式で行われており、ジーノ・バルタリ、ファウスト・コッピという2人のスター選手を擁するイタリアや、キュプラー、ユーゴ・コブレといったスイス勢が強豪として君臨し、地元フランス勢は苦戦を強いられていました。

しかし、1953年になると状況は変わり始めます。ボベが初のツール制覇を成し遂げるこの年、強豪選手たちの衰えが見え始めました。ツールでは5人のフランス人選手がマイヨ・ジョーヌを奪い合う展開となり、地元勢が久々に活躍を見せました。一方、バルタリ率いるイタリアは振るわず、スイスもコブレをはじめとするリタイアが続出しました。ボベは、第18ステージのイゾアール峠で一気にスパートをかけ、区間優勝を果たし、前ステージまで総合首位だった同胞のジャン・マレジャックからマイヨ・ジョーヌを奪い取りました。さらに、第20ステージの山岳個人タイムトライアルでも圧勝し、最終的にはマレジャックに14分18秒の差をつけて総合優勝を果たしました。

1954年、ボベは第4ステージの山岳個人タイムトライアルで勝利し、早くもマイヨ・ジョーヌを獲得、第7ステージまでそれを保持しました。その後、マイヨ・ジョーヌはキュプラーらの手に渡りますが、第14ステージでボベは区間優勝のキュプラーと同タイムの2位でゴールし、再びマイヨ・ジョーヌを奪回。その後は総合2位のキュプラー以下を寄せ付けず、見事連覇を達成しました。

1955年、ピレネー超えステージ初日の第17ステージでボベは区間2位に入り、マイヨ・ジョーヌを奪取。しかし、ベルギーのジャン・ブランカールトが猛追を見せます。第17ステージ終了時点で、ブランカールトはボベに7分以上の差をつけられていましたが、第18ステージを制し、さらに第21ステージの個人タイムトライアルも制して、ボベとの差を4分53秒まで縮めました。しかし、最終ステージは平坦ステージであり、ブランカールトの追撃はここまで。ボベはツール・ド・フランス史上初の3連覇を達成しました。

ジロ・デ・イタリアでは、アルフレッド・ビンダが1927年から1929年まで3連覇を達成していましたが、ツール・ド・フランスでは、これまで2連覇を達成した選手は数名いたものの、3連覇を達成した選手はいませんでした。第二次世界大戦後、ボベが初めてこの偉業を成し遂げたのです。

ボベの3連覇中、フランス勢の選手層は厚みを増しており、1956年、1957年のツールには出場できませんでした。1958年に3年ぶりに出場したものの、フランスチームのエースは、後にボベの記録を上回る4連覇を達成するジャック・アンクティルとなっていました。この年のツールでは、アンクティルが途中棄権してしまいましたが、ボベは完走。しかし、優勝したシャルリー・ゴールから31分39秒遅れて7位に終わりました。1959年のツールにも出場しましたが、途中棄権に終わり、これがボベにとって最後のツールとなりました。

その他の実績

ツール以外でも、ボベは数々のレースで勝利を収めています。世界自転車選手権（1954年）、ミラノ〜サンレモ、ジロ・ディ・ロンバルディア（1951年）、パリ〜ニース、グランプリ・デ・ナシオン（1952年）、ロンド・ファン・フラーンデレン、ドーフィネ・リベレ（1955年）、パリ〜ルーベ（1956年）などを制覇。また、ボルドー〜パリ（1959年）でも優勝し、クリテリウム・アンテルナシオナルでは1951年、1952年と連覇を果たしています。1957年のジロ・デ・イタリアでは総合2位に入っています。

1960年に現役を引退後、ボベは事業家に転身し、いくつかの事業で成功を収めました。特にサラソセラピーという海水由来の健康用品は、大ヒットを記録したと言われています。

著書

ボベは著書『自転車チャンピオン』（1959年、日本語訳2005年、未知谷）の中で、自転車ロードレーサーとしての経験をもとに、レース中の心理や戦術、日常の生活態度などを解説しています。

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