ルイテン726-8

ルイテン726-8：近傍の連星系

ルイテン726-8（Luyten 726-8, L 726-8）は、くじら座に位置する連星系で、太陽系から約8.82光年という比較的近い距離に存在します。この連星系は、太陽系に6番目に近い恒星系として知られています。主星はくじら座BL星（BL Ceti）、伴星はくじら座UV星（UV Ceti）とも呼ばれ、特に伴星のUV星は閃光星（爆発型変光星）としてよく知られています。

発見の経緯

この連星系は、1948年に天文学者ウィレム・ヤコブ・ルイテンが、固有運動の大きい星のカタログを作成している際に発見されました。ルイテンは、この星が1年間に3.37秒という非常に大きな固有運動を示すことを観測し、ルイテン726-8として登録しました。この番号は、BRUCE plates systemに基づくもので、726は写真乾板上の空域番号、8はその空域内での番号を示します。その後、伴星のBが閃光星であることが判明し、変光星の命名規則に従ってUV星という名前が与えられました。

連星系の特徴

ルイテン726-8の二つの恒星は、共通の重心の周りを26.3年の周期で公転しています。その軌道は離心率0.62の楕円形であり、軌道長半径は5.5天文単位です。この距離は、潮汐力が相互に影響を及ぼすには少し離れすぎていると考えられています。

主星と伴星はともに小さな赤色矮星であり、2016年の研究では、主星の半径が太陽の16.5％、伴星の半径が15.9％と測定されています。両星はほぼ同じ質量を持ち、スペクトル型などの性質も類似しています。赤色矮星としては自転速度が速く、大規模なフレアを頻繁に起こし、スペクトルには輝線が現れる特徴があります。この点は、自転速度以外は、プロキシマ・ケンタウリとよく似ています。

また、ルイテン726-8の恒星は、恒星進化論から予想される同質量の主系列星と比較して、半径がわずかに大きいという特徴があります。これは、若い恒星に見られる特徴であり、ヘルツシュプルング・ラッセル図上の位置に基づくと、年齢は数億年以下と推定されます。しかし、赤外線の光度は若い恒星のものとは一致せず、5～10億年以上の年齢が予測されています。このような標準モデルからの逸脱は、二つの星が強い磁場を持っていることに起因する可能性があります。

くじら座BL星（主星）

主星のくじら座BL星は、スペクトル型M5.5Vの赤色矮星です。UV星と同様に閃光星ですが、UV星ほど顕著な変光を示しません。BL星は0.243日という短い周期で自転しており、太陽系から見た自転軸は、約60度傾いています。恒星表面には顕著な黒点が存在し、中緯度と極周辺の2か所に分布のピークが見られます。この星は、UV星とともに赤色矮星の中でも最強クラスの磁場を持つ天体の一つであり、4500～5200ガウスの磁束密度が観測されています。

くじら座UV星（伴星）

伴星のくじら座UV星は、スペクトル型M6.0Vの赤色矮星です。この星は、最初に発見された閃光星ではありませんが、その顕著な特徴から、くじら座UV型という変光星の型名の由来となりました。UV星は、その明るさを劇的に変化させます。例えば、1952年には、わずか20秒の間に75倍もの光量増大が観測されています。

UV星の自転周期は、BL星よりもわずかに短く、0.227日です。自転傾斜角は約64度で、BL星とほぼ一致しています。UV星の黒点は、BL星よりも周囲との温度差や面積が大きく、また、緯度50～56度を中心として経度方向に偏って分布しています。UV星は、BL星と同程度か、やや強い磁場を持ち、磁束密度は5800～6700ガウスに達します。質量や自転周期がBL星とほぼ同じであるにも関わらず、磁場のトポロジーはBL星とは大きく異なっています。

様々な名称

連星系全体を指す名称としては、L 726-8, G 272-61, GJ 65, GCTP 343.10, Luyten 726-8AB, BL-UV Cetiなどがあります。また、A/B個々の恒星を指す名称としては、BL/UV Ceti, BL/UV Cet, くじら座BL星/UV星, LHS 9/10, LCC 0090/0100などが使われています。

補足

ルイテン726-8は、その特異な活動から、多くの天文学者にとって非常に興味深い研究対象となっています。近い将来、この連星系に関する新たな発見がなされるかもしれません。

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