ルイージ・ディ・ターラント

ルイージ・ディ・ターラント：波乱に満ちた生涯

ルイージ・ディ・ターラント（Luigi di Taranto, 1320年 - 1362年5月26日）は、中世ナポリ王国の王であり、プロヴァンス伯、フォルカルキエ伯、そしてターラント公でもありました。彼は、ナポリ女王ジョヴァンナ1世との結婚を通じて王位を得ましたが、その治世は内乱と混乱に満ちたものでした。

生い立ち

ルイージは、ターラント公フィリッポ1世とカトリーヌ・ド・ヴァロワの次男としてナポリで生まれました。彼は、父方でジョヴァンナ1世およびその最初の夫アンドレア・ドゥンゲリアの両方と従兄弟の関係にあり、母方ではジョヴァンナ1世と従兄妹の関係にありました。彼の兄ロベルトは、ジョヴァンナ1世と恋愛関係にありました。

結婚と権力掌握

ジョヴァンナ1世の最初の夫アンドレアが暗殺された際、ジョヴァンナ1世がルイージやロベルトの助けを借りて暗殺を命じたのではないかと疑われました。アンドレアの死後、ジョヴァンナ1世はターラント公ロベルトの影響を強く受けましたが、やがてルイージに接近しました。その後、ロベルトとルイージの母カトリーヌ・ド・ヴァロワが死去し、ロベルトがターラント公領をルイージに譲りました。

1347年、ルイージはジョヴァンナ1世と結婚しました。この結婚は、本来は教皇の特免状が必要な近親婚でしたが、アンジュー家支流間の対立を解消し、ルイージがナポリ王国を確保するためのものでした。しかし、ハンガリー王ラヨシュ1世がアンドレア殺害の報復としてナポリに侵攻すると、ルイージとジョヴァンナ1世はプロヴァンスに逃れました。その後、アヴィニョンで教皇クレメンス6世に結婚の承認と支援を求め、ジョヴァンナ1世は教皇にアヴィニョンを売却しました。

共同統治と王権の奪取

黒死病の流行によりハンガリー軍が撤退すると、ルイージとジョヴァンナ1世はナポリに帰還しました。1349年初めから、王国で発行される全ての文書は両者の名前で発行され、ルイージが軍事要塞を管理していました。共同統治の間、鋳造された貨幣にはルイージの名前がジョヴァンナ1世の前に記されていました。ルイージは1352年まで正式には王と認められませんでしたが、ナポリの人々からは既に君主と見なされていました。

ルイージは、ハンガリーからの攻撃による混乱に乗じてジョヴァンナ1世から王権を奪い、彼女の支持者を宮廷から一掃しました。ジョヴァンナ1世のお気に入りであったエンリコ・カラッチオーロを姦通罪で処刑したとも言われています。

ナポリ王としての治世

1350年、ハンガリー王ラヨシュ1世が再び侵攻すると、ルイージとジョヴァンナ1世はガエータに逃亡しました。ルイージは教皇の助けを借りてハンガリー軍を退けましたが、教皇からはジョヴァンナの権利のもとで王位を保持するという条件を受け入れさせられました。1352年、ルイージは教皇から正式にナポリ王国の共同統治者として認められ、ジョヴァンナ1世と共に戴冠しました。ルイージは戴冠式の際に騎士団を創設しましたが、これは自身とジョヴァンナの評判を向上させるためだったと考えられています。

1356年、ルイージとジョヴァンナはシチリア王として戴冠しましたが、シチリアはナポリとは別の王国として支配されており、彼らがシチリアを支配することはできませんでした。

教皇クレメンス6世の死後、教皇インノケンティウス6世はルイージとジョヴァンナ1世を破門しましたが、後に和解しました。1360年、ルイージはシチリアを奪おうと試みましたが、失敗しました。ナポリでは、アンジュー＝ドゥラッツォ家との対立に直面し、従兄弟のグラヴィーナ伯ルイージが反乱を起こしました。

死とその後

ルイージは1362年5月26日にナポリで死去しました。死因は腺ペストだったとされています。彼の死後、ジョヴァンナ1世は王国における権力を取り戻しました。ジョヴァンナ1世はその後、再婚しましたが、共同統治者として地位を与えたのはルイージだけでした。ルイージの死により、彼が創設した騎士団は解散されました。

年代記作者は「ルイージの死が王国に大きな腐敗をもたらした」と述べていますが、同時代人はルイージを無能な君主と見なしていました。ペトラルカはルイージのことを「暴力的で傲慢、浪費家で貪欲、放蕩で残酷」な人物と評しています。ルイージの最大の功績は、ニッコロ・アッチャイオーリを大元帥に任命したことであり、ナポリに有能な行政官と軍事指導者をもたらしました。

子女

ルイージとジョヴァンナ1世の間には以下の2人の娘がいました。

カテリーナ（1348年6月30日 - 1349年6月8日）
フランチェスカ（1349年3月 - 1352年5月23日）

どちらも夭逝しています。

まとめ

ルイージ・ディ・ターラントは、ナポリ女王との結婚を通じて王位を得たものの、その治世は権力闘争と内乱に明け暮れた、波乱に満ちた人生でした。彼自身の能力と人格に対する評価は厳しく、後世の歴史家からも無能な君主と評されています。しかし、彼が任命したニッコロ・アッチャイオーリは、ナポリ王国に重要な貢献をもたらしました。

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