ルイ2世 (フランドル伯)

ルイ2世の生涯：フランドル伯としての波乱

ルイ2世（1330年10月25日 - 1384年1月30日）は、フランドル伯として知られる人物です。彼は、ヌヴェール伯、ルテル伯、ブルゴーニュ伯、アルトワ伯といった複数の伯爵位も兼ねていました。生誕地であるマール（現在のブルッヘ近郊）にちなんで、ルイ・ド・マールとも呼ばれています。

若き日の相続と内乱の鎮圧

1346年、ルイ2世は父であるフランドル伯ルイ1世がクレシーの戦いで戦死したため、伯爵位を相続しました。当時のフランドルは、父の代から続く反乱に悩まされており、ルイ2世は即座に鎮圧に乗り出しました。ヤコブ・ヴァン・アルテベルデに率いられた反乱都市を相手に戦い、1348年12月までにこれを平定しました。この内乱鎮圧を通じて、若きルイ2世は領主としての手腕を発揮しました。

イングランドとの接近と領土拡大

父が親フランスであったのに対し、ルイ2世はイングランドとの関係を深め、領土拡大を狙いました。1355年には、妻マルグリットの父であるブラバント公ジャン3世が死去したことを機に、妻の姉ジャンヌの夫であるルクセンブルク公ヴェンツェル1世に戦争を仕掛け、メヘレンとアントウェルペンを獲得しました。この領土拡大は、ルイ2世の野心的な一面を示す出来事でした。

フランスの干渉と政略結婚

しかし、フランスからの干渉は徐々に強まり、ルイ2世の思惑通りには進みませんでした。1357年、フランス王ジャン2世の介入により、一人娘で相続人であったマルグリットをブルゴーニュ公フィリップ1世と結婚させることになりました。その後、フィリップ1世が死去すると、ルイ2世はイングランドとの政略結婚を画策し、1363年にマルグリットをイングランド王エドワード3世の息子であるケンブリッジ伯エドマンド・オブ・ラングリーと再婚させようとしました。しかし、フランス王シャルル5世が教皇に働きかけ、この結婚は無効とされました。これは、ルイ2世が国際的な政治情勢に翻弄された一例と言えるでしょう。

ブルゴーニュ公との結婚と内乱の再燃

フランドルをイングランドの拠点とすることを警戒したシャルル5世は、弟のブルゴーニュ公フィリップ2世（豪胆公）とマルグリットを結婚させようとしました。ルイ2世は当初反対しましたが、母の説得と、シャルル5世からの領地割譲の約束により、1369年にマルグリットと豪胆公を結婚させました。この結婚は、ルイ2世にとって政治的な妥協の産物でした。

1375年、レイエ川の運河開削を巡ってヘントで反乱が起こり、イーペルやブルッヘにも拡大しました。ルイ2世はこれを鎮圧しましたが、ヘントの抵抗は激しく、1382年にはヤコブ・ヴァン・アルテベルデの息子であるフィリップ・ヴァン・アルテベルデを擁立してフランドル軍を破りました。この反乱は、ルイ2世を窮地に追い込み、リールへと逃亡を余儀なくさせました。

反乱の鎮圧と晩年

ルイ2世は、婿である豪胆公に助けを求めました。豪胆公は、甥のフランス王シャルル6世の支援を得て出兵し、ローゼベーケの戦いでアルテベルデを討ち取り、反乱を鎮圧しました。この勝利により、ルイ2世はフランドルの支配権を維持することができました。しかし、2年後の1384年、ルイ2世は53歳で死去し、遺領は豪胆公とマルグリット夫妻に相続されました。ルイ2世の死は、フランドルの歴史における重要な転換点となりました。

家族構成

1347年、ルイ2世はブラバント公ジャン3世の次女マルグリットと結婚し、2男1女をもうけました。

ピエール：夭折
シャルル：夭折
マルグリット3世（1350年 - 1405年）：ブルゴーニュ公フィリップ1世と結婚、死別後ブルゴーニュ公フィリップ2世と再婚。

まとめ

ルイ2世は、フランドル伯として、イングランドとフランスの間で複雑な立場に置かれながらも、領土拡大と内乱鎮圧に尽力した人物です。その生涯は、政治的な駆け引きと家族関係に翻弄され、数々の困難に直面しました。しかし、その中で培われた手腕と決断力は、フランドルの歴史に大きな足跡を残しました。

参考文献
森田安一編『新版世界各国史14 スイス・ベネルクス史』山川出版社、1998年。
ジョゼフ・カルメット著、田辺保訳『ブルゴーニュ公国の大公たち』国書刊行会、2000年。
佐藤賢一『ヴァロワ朝 フランス王朝史2』講談社（講談社現代新書）、2014年。

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