ルウェンゾリ山地

ルウェンゾリ山地：アフリカの秘境、氷河を抱く山

ルウェンゾリ山地は、ウガンダとコンゴ民主共和国の国境に位置し、その壮大な景観で知られています。最高峰は標高5,109mを誇り、赤道直下に位置しながらも、山頂付近は万年雪に覆われています。アフリカ大陸で万年雪を戴く山は、キリマンジャロ山、ケニア山、そしてこのルウェンゾリ山地のみです。その貴重な自然環境から、山地の大部分は「ルウェンゾリ山地国立公園」（ウガンダ）、「ヴィルンガ国立公園」（コンゴ民主共和国）として世界遺産に登録されています。また、ウガンダ側は2008年にラムサール条約登録地となりました。

地理と地質

ルウェンゾリ山地は、アフリカ大地溝帯に属する西リフトバレーの隆起によって形成されました。山地の長さは約120km、幅は約65kmで、深い峡谷によって隔てられた以下の6つの主要な山塊から構成されています。

スタンリー山群 (Mount Stanley、5,109m) - 最高峰マルゲリータ峰を含む
スピーク山群 (Mount Speke、4,890m)
ベイカー山群 (Mount Baker、4,843m)
エミン山群 (Mount Emin、4,798m)
ゲッシ山群 (Mount Gessi、4,715m)
ルイジ・ディ・サヴォイア山群 (Mount Luigi di Savoia、4,627m)

スタンリー山群のマルゲリータ峰は標高5,109mで、山地全体の最高地点です。約300万年前のプレート運動によって傾斜し、圧縮された片麻岩や花崗岩が山体を形成していると考えられています。

多様な植生と動物相

ルウェンゾリ山地の特徴は、標高に応じて変化する多様な植生です。熱帯雨林から高山草原、そして雪原まで、様々な環境が共存しています。山地全体が雲に覆われやすく、非常に湿潤な気候のため、コケ類が繁茂し、地域によっては6mにも達する巨大なヒースが生育しています。また、ジャイアントロベリア（Lobelia bequaertii）などの珍しい植物も見られます。マルミミゾウや霊長類、固有種の鳥類など、多様な動植物が生息しており、独特な生態系を形成しています。

歴史

ルウェンゾリ山地は、紀元後150年頃にプトレマイオスが著した『ゲオグラフィア』に記述された「月の山脈」（Lunae Montes）に比定されることがあります。しかし、記述が曖昧なため、断定はできません。ヨーロッパ人で最初にこの山地を目撃したのは、探検家のヘンリー・モートン・スタンリーで、1889年のことでした。それ以前にも探検家たちは付近を訪れていましたが、山地が常に雲に覆われていたため、その存在に気づくことができませんでした。1889年6月7日、スタンリー探検隊の副司令官ウィリアム・グラント・ステアーズが標高10,677フィート地点に到達し、非アフリカ人として初めてルウェンゾリ山に足跡を残しました。そして、1906年にはルイージ・アメデーオ・ディ・サヴォイアが初登頂に成功しました。

氷河の後退

ルウェンゾリ山地の氷河は、20世紀以降の気候変動の影響を大きく受けています。1906年には、6つの山に43もの氷河が存在し、総面積は7.5km2に達していました。これは当時アフリカに存在した氷河の約半分に相当します。しかし、2005年の観測では、氷河はわずか3つの山に約1.5km2を残すのみとなっています。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのリチャード・テイラーらの研究によると、この氷河の後退は地球規模の気候変動が原因であり、山地の植生や生物多様性に深刻な影響を与えています。

ルウェンゾリ山地は、その独特な自然環境と景観から、訪れる人々を魅了し続けています。しかし、気候変動による氷河の後退は、この貴重な生態系に深刻な脅威を与えています。今後の環境保全対策が、ルウェンゾリ山地の未来を左右すると言えるでしょう。

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